審査を振り返って

部門全体について 審査委員長から

菅野:この部門はブランデッド・コミュニケーションなので、AカテゴリーからDカテゴリーまでどのカテゴリーにおいても「ブランデッド」であるプロジェクトを評価しました。

もちろん純然たる“広告”だけを対象にする必要はなく、社会課題やアーティスト、または都市が対象でもいいわけです。表現の主体が何らかあって、そのために機能するコミュニケーション、デザインのアイデアやクラフトを評価することを前提としました。

審査はまずオンラインで評価をしてもらい、その点数に基づいて審査委員が集合して議論しました。海外賞などの広告賞の場合は、一番点の高い人と一番点が低い人を1人ずつ抜いて平均を取る通称「カンヌ式」がメジャーです。極端な評価を省いて議論するという、よくある方法なんですけど、この審査では審査委員の数がそんなに多くないし、そんなに自社のプロジェクトを無理矢理上げようとする人もいないだろうということで、この方法は取りませんでした。普通に、皆さんの平均点をベースに議論した。参考までにカンヌ式も算出しましたが、ほぼ結果は変わっていなかったので、審査委員の皆さんは誠実にスコアを入れてくださったんだなと判断しまして、そのスコアをベースに議論し賞を決定しました。
審査時は、ファイナリストの順位表を配布して議論を行いました。その資料においてはファイナリスト以上の候補が目安の数で示されています。これは数字だけで切っていて、議論によってその数は多少減ったり増えたりするわけです。

順序として、まずファイナリスト候補を対象に議論を行い、欄外にある作品でも「いいと思うのに落ちてるなあ」というものがあれば手を挙げてもらい議論の上でリボートして、点数が上がれば上位に入ってくるという風にしました。
ファイナリストのリストがこれでいいかを決めて、さらにブロンズ以上の順番と線引きはどうしますか、シルバー以上どうしますか、ゴールド以上どうしますか、という風に絞っていきました。

Aカテゴリー(デジタル・エクスペリエンス審査)

<ソフトバンク、Y!mobile 『720 HOURS OF YOUTH(恋のはじまりは放課後のチャイムから)』>

レイこれリアルタイムで見ていないので説明と結果に基づいた意見ですが、「ソフトバンク、Y!mobile『720 HOURS OF YOUTH』」はいいと思いました。アイデアとしては正直そんなに新しいものではないのですが、本当にありそうなシチュエーションをしっかり、すごく自然に表現しているなと。それって簡単そうで、結構出来てない事なんですよね。だからテクニックがすごいとか、アイデアが新しいというよりは、そのままのことをそのまましっかり見せていることを評価したかったので、結構僕は点数を高くしました。この作品は、このカテゴリーでもプロモーションのカテゴリーでも、唯一高く入れたものですね。

菅野若い年代の子を狙っているので、審査委員たちはターゲット的に当たっていない。だから評価がそこまで高くいかなかったんじゃないかという気もしますね。

レイ見る人が、本当に純粋に見たんじゃないかなって思ったんですよね。

佐々木よくつくりこんでありますよね。

レイただ、彼らが本当に見たのかというのはわからないんですけど。

菅野検索した感じだと、再生数は相当いってました。

レイこの間のカンヌで、ソーシャルのカテゴリーでグランプリを獲ったナイキの『Nothing Beats a Londoner』というキャンペーンがあったじゃないですか。あれにちょっと似てるところはある。あの作品がよかったところは、上からのコマーシャルをバーンというのではなく、下からじわじわじわじわっとやる感じ。今だからこそ、2017年2018年だからこそできるものだなと思いました。この「720 HOURS OF YOUTH」は、本当にこの対象の人たちが共感をもって見てたのか、もしくは審査をしたおじさん連中がわかんなかったか(笑)。

佐々木CLIOのブランデッド部門にもこれは上がってきていて、同じような話だったんですよ。本当に見られていたのかはわからないし、すごくイノベーティブなものではないんですけど、ターゲットのデジタル接触のしかたで言うとこれは確かによくつくりこんである。今どきのやり方。

レイすごく当たり前のことを当たり前にやっているという感じなんです。それってすごく大事。制作のプロダクションのクオリティもちゃんとできている感じだし。

佐々木今どきのティーンズが楽しむならこういうのあってもいいよねと。僕もこれ実は高い点を入れているんです。まあ努力がすごいというか、リザルトを信じるならば、よくつくったねという意味もあると思うんです。

菅野いいリザルトですよね。

レイだから賞を獲るためだけにつくったものではなくて、本当に一般の人を対象につくっている感じがしたんですよね。この作品が、僕がこのカテゴリーで高く評価しましたが、上位からは外れていましたね。

僕もリアルタイムで見なかったけど高い点を付けました。精緻な作り込みをしているところを評価したいと思いました。

菅野実績で言うと数見られてますよね。

中村僕も、特に付け足すことはないけど、いいなと思いました。

(笑)

イムこの手のネット系のやつで言うと、思い浮かべそうな感じなんだけどなかなか実現しないので、ここまでやりきっているのがすごい。今ツイッターとか、みんな頭の中にタイムラインが描けるからこそ、こういうものが出てきた時に受け入れられるんだろうなと思って。これ、例えば5年前とかだったら全然「ん?」て思って終わったのかなと思うんですけど。そういう意味で言うと非常に今の時代に合ってるんだろうし、やりきって、かつ見ていて恥ずかしくないというのがいいな。

菅野最初、登場人物のツイートから始まるでしょう。最初のこの登場人物のアカウントってフォローされてたのかな。

尾上絶妙に有名な人たちを使っているんですよね。もともとフォロワーのいる人たち。

菅野が、自分のアカウントでやってるのね。

尾上別アカつくってるんじゃないでしょうか? そこから流入させて。

菅野ああ、「始めました」みたいな。もともとソーシャルネットワークの人気者なんですね。

尾上そこのつくり方もすごく上手だなと思います。役者やモデルや、それぞれのジャンルの人気者たちという。

保持じゃあすごいちゃんとしてるんだね。

尾上なかなかここまでうまくいかないと思います。

イムテラスハウスみたいな感じかな。

尾上割とリアリティがあります。さすがに全部は追えませんでしたけど、そういう雰囲気はあるかもですね。

佐々木人の存在を見せる賢いやりかたですよね。

保持毎日放課後にちゃんとドラマとしてやっていた。最初高めに付けてたけど、最後の最後でこのエモさがターゲットではない自分には理解しきれていないと思って。中途半端な点にしちゃったんですけど。

菅野若い人向けゆえに。

保持自信が持てなかっただけです。

菅野でもこんだけ根性入れて、相当大変でしたよね、つくるの。

イムこれで見られなかったら超恥ずかしい。

(笑)

イム「やる」と選択したのが素晴らしい。

イムどうやってみんなをフォローさせたんだろう。

菅野最初そのモデルの子がアカウントつくって、とやってるんだろうね。

保持「別アカつくりました」みたいな感じで、最初はそこから引っ張ってきてる。

イムこうやって5つのタイムラインが並んでたのかな。これは単純にこういう説明用に。

これを見るためにはほかのアカウントもフォローしなくてはいけなくなる、というのを自然にやったわけでしょ。よくできてる。 今どきの高校生って、二人の会話を世界に向けて発信してるじゃないですか。その感じがすごいわかってんなあって思った。高校生が普通にツイッターで会話してる感覚とか、そういう今どきのリアリティがある。

菅野これはY!mobileとはどういう関係性が。

若者を応援する文脈ですよね。

橋田ティーン獲得はキャリアの命題ですからね。

「十代応援します」という文脈の一環のブランディングだと。

保持中に白々しく出て来たりはしてなかったですけどね。

菅野スマートフォンはめっちゃ出てきますね。驚くほど写真もとるし。

大八木仕組みは最高だなと思いました。内容のサマリーがわかるとよかったんですけど。色(注ブロンズ以上)を付ける時とかの示唆にね。仕組みとリザルトはすごい。あとさっきイムさんも言ってたけど、こういう企画ってやって誰も見なかったらぞっとするので、それを乗り切ったチームの胆力がすごいな。

イムPRじゃないけど人を引っ張ってくる努力って、相当されたろうなと。

保持この30日間の総インプレッション数って、このやりきりに対して妥当なのか、どうなのか。動画で言うと3000万。30日間でいうと1本あたり100万。

大八木それがずっと続いてるってすごいよね。

イムちゃんとY!mobileのYouTubeチャンネル5倍になってる。

保持チャンネル登録して見てるからほかのにも当たるようになるよと。…構造すごい。

<Double A (1991) Public、Obsession for smoothness『Double A』>

レイ作品としてはいいと思いますし、受賞にはしっかり値すると思います。少し気になるのは、このOK Goのやり方が方程式になってしまっていて、それを繰り返すのがよいのかを議論するのもありかもですね。

中村これ素朴にプリンターのCMかと思ってました。

菅野紙ですね。

中村紙なんですよね。

菅野確かに、最初プリンターの広告だと思うかもしれませんね。この作品は、事前投票の評価が分かれつつも、平均の点数が高かったんで全然問題ないかなと。これ相当大変なことやってますよね。リザルト、これだけの結果を出せるというのはなかなか見たことがないですね、特に日本発では。

<UHA味覚糖、ぷっちょ『ぷっちょあーん4Dゴーグル』>

これ、意外に高い点数付けましたよ! 「ぷっちょ」。

菅野「ぷっちょ」はすごい評価の分散を見せているんですよ。

保持僕も高い点数付けちゃいました。

これ、実際に体験しなかったとしても、これをやってること自体がおもしろすぎていいなと。

菅野(映像を改めて見て)やってることと音楽が全然合ってない(笑)これって購入者とか当選者が実際に付けて遊べたの?

佐々木ひとりだけプレゼントしたっていうストーリーだったと思いますよ。だから一個しかつくってない。

レイひとりだけ。

菅野むしろこのムービー自体をみんなが楽しんで、広まったっていう構造ですね。

レイ「ぷっちょ」はプロモーションとしてこういうのをつくったわけですよね。
ばかばかしくていいですね。

ちゃんとつくるのえらい!

橋田でもこれ、果たしてデジタル・エクスペリエンスなのだろうかということがすごく気になる。プレゼントはしてるけど台数があまりなくて、情報は広がるけど体験としては広がりにくい。そうするとデジタルというより、プロモーション的な所で評価したほうがいいかなと。

そう、これ別にやらなくても見てるだけでもおもしろいよね。

保持これはプロモにはでてなかったですよね。

菅野出てないね。

菅野プロモにもPRにも出てないですね。強い意志を持ってデジタル・エクスペリエンスに出されていた(笑)。

意思をもってデジタル・エクスペリエンスに出すのわかるけどね。

イム個人的にはこれあまり評価できなくて。男目線ならおもしろいと感じる人もいるだろうけど、女子目線だとどうかなとか考えてしまいますね。嫌悪感を感じるかもしれないなと。あと完成度がそんなに高くないじゃないですか。

菅野まあ、この仕組みじゃ、あの子に食べさせてもらってる感じはしないかもしれないですね。事前投票の分散が大きく、すごく評価している人と、そんなに評価していない人に分かれましたね。

MIKIKO女子目線でも不快にならないように、わざと馬鹿馬鹿しくしているのかな?と思っていました。

保持橋田さんの言う通り、これをデジタル・エクスペリエンスとして捉えると、ちゃんとしたエクスペリエンスを提供できるデバイスになっているかというと、なってない気がする。だからカテゴリーが合ってるのかという話につながるかもしれない。

――結果としてこの作品は審査委員全員の挙手によってプロモーションに移行し、そのカテゴリーで評価されました。

<パナソニック、THE PHILHARMONIC TURNTABLE ORCHESTRA『Technics』>

大八木個人的には、メーキングも含めて仕上がりの曲もカッコイイなと思って。

菅野この作品は当初は欄外でした。個人的には、ファイナリストぐらいに入っていてもおかしくないとは思いましたけど。審査委員の評価がすごく分かれました。

佐々木説明ビデオがわかりにくいかな。

レイこれ、対象の人は誰なんでしょうね。レコードマニアとかDJとか?

佐々木普通の人が買う商品ではないですよね、だからこういう施策を狙った。

菅野コミュニケーションの目的とか、誰に対してどういう情報をもたらそうとしたのか、などの説明が少ないかもしれないですね。

レイ何十人かDJがいて、音楽としてギリギリで成り立ってるじゃないですか。それはすごいなと思います。

佐々木かなり狭い。この商品に興味のある、かつ出ている人たちを知っている人にとってはヒャッホウみたいな。でもそうでない人が見るとどうかなって。

菅野かなりミュージシャンの人選はコアですよね。

レイちょっと物足りなかったのは、2017年2018年にこれをやる意味があるのかと。そのへんの、技術的にも文化的にも、“今なぜこれをやるのか”がもうちょっと欲しかったかも。去年か一昨年、賞を総なめにした「Fearless Girl」は、技術的に見るとまったく新しいことではないので50年前でもよかった。けれど今、2017年のこういうことが問題になっている時、それも銅像を出した日が「International Women‘s Day」で女性の日というタイミングでやった。それプラス、ウォールストリートという男が支配しているところで出したという。いろいろ全部が重なってドカンとなったというのがあるんですけど、その辺のコンテクストがないなって思ったんですよね。

佐々木日本にありがちな、コンテクストのない「なんかおもしろいですよね」っていうやつ。

レイ今アメリカでめちゃくちゃバズってるNIKEのアメフト選手の広告があるじゃないですか。あれ、広告自体、テクニック自体は新しいことはないし、言っていることも他の人が言ってたり他のブランドが言っていたこともあるんですけど、今アメリカの政治、風潮がごちゃごちゃになっている時代に、そしてアメフトのシーズンが始まる数日前にバン!と出した、というコンテクストがすごいと思うんですよね。

菅野マーケティングと政治や社会的な風潮と切り離したがるところは日本特有かもしれないし、見方によっては良い部分なのかもしれないと思います。それにそれは世界の中でもアメリカが特に圧倒的に違うってところなのかもしれないとも思います。とはいえ、日本では広告が商品を説明することに必死で、広告が社会性や社会的な文脈と接続するというところに思慮が足りない部分はあるかもしれないですね。出演者やネタでの流行り物と広告を無理矢理くっ付ける程度しかしていない。

でもDJが買うから、そこに響くという戦略でいいのかな。

佐々木これ、たしか再発売された。そのタイミングかと言えば、タイミングですよね。

大八木ヤフオクとかでもこれずっと売り切れていたんですよ。ファイナリストにはいらないのはどうかなと思ったんです。

中村それぞれのDJのプレイが、どのように合奏されてるか、いまいちわかりにくいですね。オーケストラ感が薄いというか。

一同ああ……。

中村もともといろんなサンプリングを重ね合わせた音楽なので、それ同時にみんなでやっても、既存のサンプリングミュージックからあんまり変わった印象が少ないというか。

中村もうちょっとオーケストラならではのアレンジがあるとおもしろかったんですけど。

保持あれ、やってる場所は意味のある場所なんですか。

菅野狭い部屋ですよね(笑)

保持あそこでやるという文脈性もあるのかなと思ったけど、そんなにない。

菅野説明はないですね。

佐々木普通ならホールとかでやるから。

保持なんか意味があるのかなあと。ホールでやるのダサイ、とか?

佐々木でも着ている服はオーケストラ風という。

保持そこらへんが、演出的にちょっとつかみきれなかった。

イム取り組み自体はすごく素晴らしいし、大衆性もあると思いましたが、“優れたデジタルクラフト”という視点で言うとクオリティを満たしていないと思って。そこは皆さんどう思うか投げかけたいと思いました。取り組みに対して与えるものなのか。

レイこれが気になったのは、実際にどれくらいの一般の人がやってたのか。

佐々木画像は1万9千ダウンロード。そんなには。

レイなるほど。広告主は犬と猫のためのライフボート、NPO法人。

佐々木80何パーセントadoptされたというのは、この施策のおかげなのか、もともとなのかちょっとわかんない。

レイこれ順位結構高いじゃないですか。少し「保護犬」とう否定しがたいお題に引っ張られている気がします。
菅野すごく点数が高い人はいなくて、おしなべてみんな…これは否定しづらい話題だし。

レイ(笑)いい話ではある。

佐々木いい話感が。

イムこれ取り組みとしてやったのはウェブサイトだと思うんですけど、ウェブサイトを見た時の、なんか…結果的にはそういうことになっているのだろうけど、体験として考えた時に、そんなに特にサイトに対しては評価できないなと。

保持たしかに、アベレージどれくらい里親が見つかるのかがわからないから。高いように思っちゃった。でも放っておいてもそれくらい見つかるのかもしれないし。

佐々木保護犬にしては写真がきれいすぎる。

素敵に撮ったから83%も拾われた。ダウンロード数は少ない気もしますが、83%は評価すべきですよね。

中村でも、保護犬というのがいるよという啓蒙活動なので、別に実際どれだけ成約したかとかあんまり関係ないかな。デザインについても特に凝ったことは何もしてないけど、まあそういう位置付けのサイトなのでいいのかなと。逆に、変に凝っててもちょっと引くよね。

(笑)

中村年賀状の画像リソースをただすっきり並べましたって感じでちょうどいいんじゃないかと思いました。

小杉デザインに関しては、エッジがある人格というよりは、間口を広げるという視点では現状のようなナチュラルな人格がちょうどいいんだと思います。

<本田技研工業『Me and Honda』>

菅野これCMでもあるんですかね。

中村CMっぽい感じも。サイトはサイトでちゃんとつくっているのでこの部門でもいいんじゃないかな。すごいストレートなんですけど、いいんじゃないかなと。

<西日本旅客鉄道、北陸新幹線『北陸ゆきの、旅。』サイト>

イム個人的に意見を聞きたいので上げたんですけど、もともと83位だった…

菅野うっそ!

(笑)

イムいわゆるVRムービーなんですけど、西日本旅客鉄道、北陸新幹線『北陸ゆきの、旅。』。自分が行っていないけど、行ったらどういう情景が見られるのかとか、移動する感じとかが追体験できる。僕、気づいたら全部見ちゃってたんですよ。ありがちというか、誰でも思いつくことだと思うんだけど。実際旅行に行く時って、最近だと基本的には失敗したくないから出し惜しみせず全部見せてほしい。そういう気分でいると、非常にこのサイト、全部見せてくれて、かつ行きたくなったんです。気持ちのつくり方が非常に秀逸だと思ったのと、映像を見てると行きたくなるというか。

イムところどころ料理出てきたり、足湯してる場面とか、めっちゃ行きたくなる。

菅野デジタル・エクスペリエンスだね。

イムこんな体験できるとか、知らないじゃないですか。青森行きたくなってくる。

中村じゃあ、まあ、行ってきたらいいんじゃないの?

イム一緒に行きましょうよ!

大八木再生回数はどんな感じでしたか。

菅野1000。

イムすみません。

大八木見られてないのがもったいないね。

上西ここまでサイトをつくりこむ必要があったのか。

中村もう一個いいですか、ネガティブなほうなんですけど、東京電力のやつって、高い点数を付けた後に、低い点数に直したんです。すごいクリティカルで大事な情報公開だと思うんですけど、賞に応募するような種類のサイトなのかな。もしこれが上のほうに行って、つくった人が「どうも、皆さんのおかげです」とか言うシーンが、なかなか難しいんじゃないか。この賞の位置付けにもよると思うんですけど。

菅野僕も同じことを思いました。これをやったことを賞で褒めるべきかどうか。ちょっと、どきどきするなと。

保持僕もおんなじです。一番見ちゃう、時間をかけて。でも2点にしたんですよ。そこのモラルをどう考えていいのか自分の中で整理がつかなくて。

これってPRに出てましたっけ?

菅野出てました。

なるほど。PRの仕事である“知られてない社会課題を世の中に共有してもらう”ってことも含まれるから、PRの仕事として評価できるのではと思いました。

菅野
審査の前提としては、どの角度から見てもよければ3つのカテゴリーでゴールドでもいいと思っています。でも、どこかで高評価を得たものって、勢い余って違うカテゴリーでも上に行っちゃう時がある。

僕はPRでもデジタル・エクスペリエンスで褒めてもいいと思いました。

橋田イムさんと保持さんの言われたことって、全体に関わる大きな話な気がしました。賞の質というか、何に賞をあげるかで議論をしないと。

菅野と言いますと。

橋田デジタル・エクスペリエンスである意味は“超ある”と思ったんですよ。そこに実際には行けないから、ネットで360度見せてあげるというのはすごく意味があった。先ほどあったモラルの話は、そうだなとも思いつつ、議論の段階では僕は受け止めきれなかった。個人の主張の話だから。どういう風に考えればいいのかをみんなに聞いてみたいと思いました。

大八木そもそもモラルの問題って、右か左かというそれぞれの性分があるじゃないですか。だから僕なんかは「こんなことをやってヤダな」と思う反面、「すごく意味のあることをやったな」というのが同じ気持ちでせまって。あの後ニュースってみんな忘れちゃうけど、デジタル・エクスペリエンスはこうやって丸ごとバコッて入ってる。それはすごく意味のあることだと思います。

小杉東京電力には、これをやることでネガティブなこともありますよね。「それでもやったことに意味がある」とここで評価されれば、より情報開示が進むんじゃないか。そういった意味では…

菅野議論が活性化する。

小杉そうですね。

佐々木日本だともう東京電力は何もできない状態の中で、彼らとしてやるべき広報をちゃんとやってるということなんでしょうね。単なるバーチャルツアーっちゃバーチャルツアー。でも東京電力が唯一やるべきで、やらなきゃいけなかったこと、と思いました。

レイ僕が一般の市民だとしたら、本当のことが報道されているのかという風に疑うわけじゃないですか。こういうのを見せられたからと言って、これが本当のことかという説得力も弱いのかな。とくに新しいことをやってるわけでもないし、ここで見せられていることがいいことだけを見せているかもしれないじゃないですか。そのへんが克服できてないなという風に思ったんですよね。

佐々木課題が信頼回復だとしたら、もっとやることあるのかもしれない、と。

レイそうですね。もっとごまかせないやり方だったりするんじゃないかなと思いました。

東畑賞に出した心根と言うよりは、デジタル・エクスペリエンスの可能性みたいなことを評価したい。最もVRの役割が生きたので…心根とは一回離したほうが。

保持心根と離れられてるかは微妙だなと思いつつも、改めて思うのは、場所が場所なんで。どこがアイデアなのか、皆さんの評価ポイントを知っておきたいです。つまりこの場所にVRを持っていけば、誰がどう撮ってもびっくりする画になるだろうなと。クラフトなのか、演出なのか、皆さんの評価はどこですか。そもそもこの場所にデジタルの機材を持ち込んだという判断およびアクション自体を評価しているのか。僕はアイデアがどこなのか、そりゃこの場所でVRを撮ったら見たことがない画が撮れるよなと。

佐々木情報公開のやり方としての新しい取り組み。いくら説明してもみんな信じないシチュエーションじゃないですか。ちゃんとやってますとか、汚染水は出てませんとか言っても「嘘だろ」と言われる中で、この方法だと自分として見に行くという体験ができて、文章いっぱい書いたり写真見せたりするよりはより情報公開として受け入れられると思った。その行為がすごくいいなと思いました。

保持なので僕もつぶさに見てたんですけど、リアルタイムモニタリングとか全部デジタルはできるはずなのに、あえてそれをやっていないことに逆に「あれ?」という感じが。デジタルだったら生中継だってできるはずだろと。

菅野線量とか。

保持そう。

佐々木それは全部別のサイトに出ていたりしないんですかね。

保持このサイトに全部オーガナイズして見せるという誠実さまでやっていたら、もっと点数を素直に付けられたなと感じたんです。ピックアップされている質問も含めて、割と恣意的な印象があって。ちょっと、かなりうがった見方をしちゃっている可能性がありますが。

尾上企画としては、こういう一番行かない所に行って、それで説明してくれるというのがアイデアなのかなと。

中村やっぱり、これ出来はいいと思うんですけど、ACC賞の社会的な位置付けがすごく関連している気がします。広告業界のクリエイティブな賞ということなので、そこにはそぐわない。もっとジャーナリスティックな賞があるじゃないですか。そういうところだったらすごく意味があるんだけど、どっちかというとプラスのクリエイティブのイメージが強い賞でこれを褒めると、僕が心配することじゃないんだけど、なんかよくないんじゃないか。たぶん、心根みたいなものも多分に絡んでくると思うんですけど。
内容がいいというのは、すごくいいんじゃないかと思うんですけど。

企業のコミュニケーション活動をクリエイティブでどう解決するかを見極めるのが僕ら審査委員の仕事で、東京電力がアカウンタビリティという企業としての責任にどうクリエイティブなやり方で立ち向かったかというふうに考えればいいと思いました。

イムこれ、別の審査会ですごく評価されているんですよね。基本的に、震災とか起きた時に僕は映像を一切見ずに過ごしてきたんです。でもこないだこれを初めて見た時に、初めてスッと「見てみよう」という気持ちになったんです。時代的にやっとこれを表に出して、みんながそれを受け入れられる時期に出してきたのかなという感覚があって評価したんですけど。今、話を聞くと人それぞれ受け入れ方がいろいろあるんだな。という意味で言うと、もしかしたらリスクあるのかな。

大八木僕は評価したほうがいいと思うんですけど、点数は高く入れなかったんです。その意味が、「あの事故は最悪だけど、この会社の人が働いてくれていて、最終的によい方向に向かっていく」という、「働いている人が見える」というのが大事な気がしています。情報公開という意味でも、ニュースではなく自社発信でこういうことをやるというのは恐ろしいんだと思うんですよ。ディスられることを覚悟でやったということは、すごく勇気がある。ブレイブであるという意味で評価したほうが、ACCの広告という意味がより広くなったり、尊いものになるんじゃないか。議論を聞いてそんな気がしました。

菅野僕のほうから、今の議論とまったく別の角度からの議論の提起を。2015年の10月にNHKが、「福島第一原発360度現場報告」というVRレポートをウェブサイトで公開していて、そこから3年経って東電が出している。ここまで厳密なQ&Aも付いていないですし、報告になっていないんですけど、NHKは取材の現場でリコーのTHETAを持って撮ってきた画像を、テレビでは流せないからということでウェブサイトで公開してる。そっちがジャーナリスティックには意義があることかなと。VRは編集を許さないので、後ろに何かを隠すことができないという意味においては。ジャーナリスティックな観点ではそこで一回やってて、その後3年経ってから本人たちが行った。ちょっと僕は新規性ということに関して、“新しい視点”とか“まだ見れなかったものを提示した”のかがどうなのかなと思いました。

佐々木自分でやったというところが大事で、東電が。

保持アクションが評価のポイントの一つということは、お話を聞いているとわかります。そういう視点を提示して、どう受け取ったかどうかは自由だとしたら。

菅野という観点の中で、真っ先に東電がやっていたらアクションとして僕は高く評価すると思ったんですけど。3年前にNHKがやって、やっと3年経って重い腰を上げるという風に見えちゃったんです。だって(震災から)7年後ですからね。

保持事実これに見入ってしまった自分がいたので、エクスペリエンスとしては「へー!」と思って点数を高く付けました。割と左脳で抑えた部分があるので。そういう意味で言うと素直に評価したほうがいいのかもしれない。

大八木見せられない部分も多くあったのかもしれませんね。

菅野そういうこともあるでしょうね。

大八木事故が起きてすぐに、『いちえふ~福島第一原子力発電所労働記~』という潜入ドキュメンタリー漫画を読んでゾッとして。実際に除染する人になってみたという、あれはすごかったです。すごいドキュメンタリーを漫画でやったなと思ったんですけど。そこから7年時が経って、忘れつつある中でやる、ということの意味をどう捉えるか。難しいなと思います。企業としての意志を褒めるなら、コーポレートコミュニケーションのほうがもっと褒めやすいし。起きちゃったことはもうどうしようもないから、その中で企業として何ができるだろうというのが、7年かかったというのを、だいぶ時間が経ってるなと思うのか、7年かかったけどよくやったと思うのかは個人に委ねられるというか。 

<BASE、BASEのECサイト『5歳児が値段を決める美術館』>

橋田BASEのECサイト『5歳児が値段を決める美術館』なんですけど、内容をもう一度教えてもらえますか?

菅野自分がつくった作品を自分の言った値段で売るECショップですね。

イム個人商店をやる可能性を示す、というような目的。ECショップを手軽に始められますという。

保持実際このニュース触れた覚えがあるんですけど、あんまりBASEというプラットフォームの存在感が文脈にのっていた記憶がない。皆さんどうでした?

イムストーリーが強すぎて。

保持そうそう、割とそっちに関心が行ってしまったなと。

イムあとサイトが恐ろしく楽しい。

保持人がここに集まったことでBASEを体験しているんだと思えばいいんだろうけど、BASEがすごいというよりも、中身、絵に関心が行っちゃったから。そこがブリーフに対してどうなんだと。

大八木だけど値付けということの本質をついている感じはしますよね。買う人がいればいくらでもいい、という。

菅野割と教育的な観点がありつつ、おもしろがって見るものなのかな。やっぱり子どもって、値段を極端にするよね。

MIKIKO「ゼロ9個!」とか言ってましたもんね。

イム1万円のやつと1億円のやつの作品の差があまりない(笑)。

橋田ターゲットは誰なんだろう。親ですか? 体験させる人と情報を受け取る人のバランスがいまいち把握しきれてないです。

実質的には親がやるよね。でも簡単にECサイトができるんだということを、子どもを通じて親に理解させるということ、と理解してる。

橋田一人の親?

多くの親。

橋田じゃあニュースにならないといけない、という構造になっている。ニュースになっていたらよいのかもしれません。

でもニュースで見たんだよね。

保持たまたまかもしれないですけど、僕はニュースで見た覚えがあります。

佐々木数多ある、Eコマースサイトとかサービスを少しでも身近にするアプローチとしては、ユニークなのかなと思います。

大八木あとは、「何でもECショップになるよ」っていうのがすごい。一方にとってはいらないものでも、もう一方では50万円の価値があるものということがあるじゃないですか。値段を付けるというのは、この世の中のひとつのコミュニケーションであるということをしっかり言えてるとは思います。

保持コミュニケーションが誠実につくられていたがゆえに、powered by BASEみたいな押し出しが全然なかった。「BASEすごい」というところまでたどり着く設計には、あえてしていなかったのかな。品のいいつくりというか。

大八木BASEでつくったということが残らないということ。

保持わざとそうしてるのかなあと思いましたけど。このブリーフが個人向けECサイトの可能性というのがBASEにとどまらずということであれば、ブリーフには応えてると思うんですけど。

イム売り方というか、ああいうASPサービスで売る時の振れ幅を示している気がして。

保持その中でポテンシャルというか、BASEのみならずこういう遊び方があるという気づきをつくったということであれば、すごくいいと思う。

イムまさかこういう売り方ができるとは、玄人でも思ってない。たしかに、保持さんがおっしゃるようにBASEはあまり残らないですよね。

保持それを良しとしてるのかもしれないですね。そういう遊び方すらできる、ということさえ残ればいいと。

菅野個人向けECサイトって、俺とりあえず売るもんないなと思うんだけど、そういう意味では気楽なとっかかりとなる感じはする。BASEじゃなきゃできないことかと言うと、そうではないと思うんだけど。

保持そこはわざとくっつけようとしてないのかもしれない。そこらへん界隈が盛り上がればまず。

イムまあそこまで考えてないかもしれないけど、一回地上波というか、ニュースになれば結果的に個人でも売れるということで、探したら結局BASEにも流れ着くはずだから。目的を果たしているとも言えるかな。

<ソフトバンク、ブランド広告『私立スマホ中学』>

イムソフトバンクの私立スマホ中学ってどういうところで評価しましたか?

菅野エビ中?…エビ中じゃねえや、スマホ中学。

(笑)

菅野結構みんな平均的に、ファイナリストくらいの点数を入れていましたね。

イムあれって実際にどういう講座があるのか、映像では判断できないなと思ったんですね。

菅野バズムービーの集積みたいになっているんですね。

説明ビデオで中身のコンテンツを見せてもらえたらよかったね。

菅野ウッチャンや亀梨君が出るんだよね。
 「Y!mobile」のバラエティ版みたいな。

大八木「しくじり先生」みたいな。そこをどう評価するか。中身はおもしろかったです。

イム勉強があまり伝わってこなかったというか。実際的には芸能人が出てきておもしろいうことを言っている集積だけなのか。

大八木生徒が質問してたのね。「僕おもしろくなりたいんですけどどうすればいいですか」とか、動画コンテンツで生徒とのやり取りを記録していたのがよかった。ドラマというより亀梨君みたいに憧れの人が「グループがもうなくなると思ったけど3人で頑張っていきます」とか、リアルなのが素敵かなと。

菅野そういえば東畑さんが制作されたカップヌードルの「OBAKA's UNIVERSITY」シリーズの“炎上した人が先生になる”のと近い視点ですね。

東畑ま、大きくは。

(笑)

橋田素直に、「学生に一番近い学校になる」、という考えがスパッと好きだな。今YouTubeとかでみんな勉強コンテンツも見るって聞きます。その上で、受験じゃなくて人生観みたいなほうに振られてると思うんですけど。

佐々木このブリーフを見ると、ソフトバンクのブランド価値向上が課題。そこはどうやって落としたんですかね。

イムどっちかっていうと2番目なんですかね。気にせずに伝えるよ、というのが伝わるという。

菅野それはわかりやすい。当然ドコモやauと契約している人も見られるんですよね、これ。わあ、ソフトバンクおもしれー!みたいな。

東畑やっていることはものすごく理解していて、内容も作りも、丁寧にできている。リザルトも数字を残しているから。ものすごくシュアなコンテンツだと思う。ただ、企画者として嫉妬しづらい感じもある。やられた!これは話題になるぞ!とか「その手があったか!」と思わず言わされてしまう、企む人の原石の部分。それがあると、すごく推しやすいのに。
それも狙いかもしれませんが。もうひと越え、キャッチーなものが欲しいなと思いました。

中村受験用のオンライン学習アプリが一昨年、去年から定着してきたから、良くも悪くもいい感じでヒョイっとその流れに乗っかったような印象は受けました。タイミングとしてはとてもいいし、内容も洗練されているからいい点数付けましたけどね。

大八木タイミング感ありますよね。

<SKY Perfect JSAT Corporation/PIZZA OF DEATH RECORDS、Hi-STANDARD『PLAY THE GIFT』>

レイ個人的に好きで海外でやってもいいなと思ったのは、ハイスタンダードの『PLAY THE GIFT』ですね。

菅野すごいアナログな方法でユーザージェネレイテッドコンテンツの誘発をやっている。

レイそう、なかなか今音楽が売れない、お金払わなくてもいい時代じゃないですか。バンドのプロモーションとなるとミュージックビデオになるのを、デジタルの時代だからこそアナログでやったというのはいいなと思いました。

尾上言いづらいんですが...昔カンヌで近いものがあったんですよね。Kaizers Orchestraというのがやっていたheart breakerという曲の施策で。ちょっと僕は、新しさで言うとどうなのかなと。ただそれを待ちに待たれたハイスタがやっている、というのが意味は違いそうですし、個人的には好きなんですが...。

菅野審査の時にはカンヌの受賞作であるKaizers Orchestraのムービーをチェックしましたね。

自分がカンヌで審査委員をやっていた2013年の受賞作です。

菅野かなり構造の近いアイデアが過去あったということと、今の時代にハイスタの久々の活動再開という文脈の中でやったことの価値。そこらへんを踏まえて褒めるか褒めないか。

尾上コアアイデアの部分が結構似ているので…

外すか外さないか、過半数の投票ですかね。

佐々木かぶりアイデアは褒めない、とするのか、それとも、かぶっていても「違っている部分」のいいところを褒めるか。

菅野投票の結果、この作品は評価の対象から外すことになりました。

<キリンビール、365 FLOWERS『淡麗グリーンラベル』>

菅野キリンビールの365 FLOWERS『淡麗グリーンラベル』が、ちょっと、どう商品と関係あるのかわからなかったんです。すごい可愛かったんですけど、誕生日と、花屋でもなくて、最後ビールになったから。途中まですごい点数高かったけど、最後ビールになった途端わからなくなった。

大八木野原に花が咲いているってことじゃない。グリーンラベルだから。ただ、なんで365日誕生日なの?とは思いました。

菅野ビールを誕生日に贈ろう、みたいなことなのか。とか、広告としてどう機能しているのか。クラフトとかデザインに関しては間違いなくいいんですけど。そこの構造が僕ちょっとわかんなくて。

大八木そこはゆるやかに。

菅野最後のコピーがオチになってるのかと思いきや、そうでもないし。

大八木すごいふわっと接続してますよね。

佐々木このブランドって一連そういう施策とってるじゃないですか。直接的な商品売らんかなではなく、世界観をデジタルに延長するという。もはやかなり延長しきっていて、この施策だけではなんだかわからなくなってきていると言えばそうなんですけど。

菅野ははあ。僕、一連ずっと商品と関係ないなと思って見てて。ずっと続いているからと言ってそれが着地しているかと言うと、ずっと浮いている状態かなと。

佐々木施策単品で見るとブランドにどうくっついているかはちょっとあれですけど。

菅野きっと気分ですよね。

八木ギネスのギネスブックみたいに、楽しい話題でお酒を交わすことは気持ちいい。グリーンラベルはそのことを知っている。そのぐらいの、本当に野原の花ぐらいの。

大八木狙ってそれくらいゆるくしているのは感じますね。ただ、これが本当にブランデッドで、このブランドにしかできないことなのかと言うのは読み切れないんですけど。さっき佐々木さんがおっしゃったように、ずっとやっているということが、ゆるいのも含めて「そういう感じなんだな」っていう。

菅野ブランドの気分を定着させている。

大八木形にならない、理屈を超えた「野原で花が咲いてるんでしょ、風も吹いてるんでしょ」ぐらいの接続というのもまぁね。……

保持デジタルコミュニケーションを通じてブランドを見た時の”気分”を継続的につくりだすということを何かしらの形で褒めたいとは思う。どうしてもデジタルと言うとアクの強いものに流れがちだけど、こういう誠実な“気分”をつくる仕事は。あの商品を見た時にふわっとなんとなく思い浮かべるようになるというのは、強制的にそうさせられた気もしていて。それは、広告的な感じがしていいなと思いました。

大八木あとポジティブな面で言うと、ああいうのって糖質オフだからバイネットという文脈で、気持ちよさとかおいしさ感を感じるというのは、パッケージも含めてよくできているなあと思います。ただそれは、ATLのコミュニケーションも含めてですけど。

保持菅野さんの言う意味も分かります。これだけを見ていると、だいぶ遠いところに来たという。

菅野毎日おうち帰って一本飲もうぜみたいに、そんな切実にくっついてなくてもいいんですけど、全然気分でもいいと思うんですけど。その距離感がちょっと。

イムつくった人が生の意見聞けるの超いいですね。

菅野あ、イムさんと尾上くんの2人、つくったんだもんね(笑)。隣の席で生々しいこと言った。

保持そうか!こうとわかったらもうちょっとディスっとけばよかった。

(笑)

保持本人に意見聞こうとならないのが、かえって。

菅野いや全然気が付かなかった。一言、言ってよ。俺、棄権している人が見られるからわかるはずなのに。

(笑)

大八木そこも含めて楽しいんだけどね。

<ソニー・インタラクティブエンタテインメント、PlayStation4「PS4 Lineup Music Video」>

橋田ファイナリストに入るかボーダーラインになっていた「プレステ」だけ一回議論しません?

ラインナップで見せるというストラテジーなんだよね。

菅野つまりプレイステーションで出ているゲームを一個一個じゃなくてラインナップで、それぞれのミュージックビデオの中で紹介していくという。

橋田ミュージックビデオが気持ちよくて、最後まで見ていられます。

保持僕もすごいよくできてると思いました。割とゲームってラインナップ訴求するじゃないですか。それをエンタメ化したというところがポイントなのかな。

尾上これ僕もメチャクチャ好きなんですけど、2016年から出してますね。

佐々木これ毎年見ますよね。

尾上過去のが発明としてすごいよくて、今年のをどう褒めるのか。

大八木ずっと同じフレームでやってるんですよ。

菅野こういう継続案件は意外にね、賞から外されやすい。本当はいいんだけどね、続くってね。

保持これまでも出品されてたんですよね。

東畑クラフト次第か。

菅野そうですね。これは割と評価の分散がなくて、おしなべてみんなファイナリストくらいの点数、4か5がめっちゃ多いです。

<三菱自動車工場、企業ブランディング「週末探検家」『雲海出現NAVI』>

橋田『雲海出現NAVI』はいい仕事だなと思いました。“デジタル・エクスペリエンス”というカテゴリーの中で。

佐々木よくできてる。

気象データを使った新しい体験。

イムすごい実際的だよね。雲海を見たくて行ったのに、出なくてがっかりすることを減らしてくれる。

橋田そのガッカリを減らしてくれることを、データやリサーチの力を使って達成してくれている。すごくいいサービスだし、三菱のアウトドアなイメージへの寄与がいいんじゃないかなと。

イム出かけたくなる。

佐々木出かける理由づくりができているし、ちゃんとつくり込んである。8割ぐらい当たる。

保持外れても、ちゃんとフィードバックができるようになってましたよね。

中村これ僕グランプリだったんですけど。

(笑)

菅野ワイルドカード並みのでかい応援演説をされてましたね。

中村いやなんかね、こう……「雲海」、いいじゃないですか。

(笑)

中村10点だったんですけど、最後のだじゃれで-1点。

菅野(笑)最高点9点までしかないんですけどね!……雲海って、そんなにみんな見たいんでしたっけ。

佐々木みんなの見たいものの3位に入ってました。オーロラ・流れ星・雲海、ぐらいの。

一同へえー!

大八木ちゃんとできてますよね。続いてるし、終わってないのが。

中村今、サーファーが海の中継サイトで波を見て、行く場所を決めるじゃないですか。ああいうノリで「雲海」。

大八木キレイなデータの使い方ですよね。考え方として。

保持昨今じゃないとできない。

大八木前に別の審査会で「桜前線とか日本人は好きだよね」と外国の人が言ってて、たしかにこういうの好きだよなーと。

イムめちゃめちゃ効いてますよ。そもそもモノとして。

中村最近よくあるAI活用しました的なものって、ちまちまっと小さいことを最適化しがちなんだけど、スケールが大きい自然現象とつながったということで、知覚が拡張される感じがある。「あ、明日、日本のここに雲海ができるんだ」と。それがすごくおもしろい。出かけたくなる。

菅野そんな議論がなされてこの作品はファイナリストに入ることになりましたね。

Bカテゴリー(プロモ&アクティベーション審査)

菅野それでは、プロモーション&アクティベーションカテゴリーのほうに移らせていただきます。プロモーション&アクティベーションと、CカテゴリーのPRは応募作品も重複していたり、ランキングがかぶっているものもありました。当然、両方の視点で良いプロジェクトの場合、両方で褒めるわけで、最後に横並びにして確認しましたね。

中村プロモーション&アクティベーションとPRの定義をもう一度おさらいさせてください。

菅野募集時にカテゴリーの定義文を出しているので、それを読みます。プロモーション&アクティベーションは、「商品やサービスの購入や利用に対して、ターゲットの積極性を促すことができた最も新しくて創造的なアイデアを表彰します」となっているので、比較的購入に対して行動的に心理的に喚起するものを評価します。PRは「適切なメディア戦略とコミュニケーションを通して、ブランドと生活者の間の信頼関係を築き、生活者の意識や態度や行動に影響を与えたプロジェクトを表彰します」ということです。もちろん、厳密に切り分けが出来ないから、意味がかぶってる部分もあると思います。

中村PRには、CSR的なことも入ってる。

菅野入ってます。企業活動的なことも入ってます。嶋さん、PRの定義に関して補足ありますか。

カンヌなどの議論を鑑みると、合意形成を第三者を巻き込んで行う仕事がPRですよね。そのための手段は選ばない。ロビイングでもかまわないし、学会をつくってもいい。国際会議を開催してもいい。もちろん、パブリシティもマスメディアという第三者を巻き込む手法の一つ。ようは、なんらかの手段でコミュニティの中の第三者を巻き込んで合意形成を行い、今までない価値観やライフスタイルを定着させるってのがPRと考えてもらっていいと思うよ。

中村PRってパブリック・リレーションか。プロモーションの略ではないんですね?

菅野プロモーションの略ではないです、そうだとするとかぶりすぎている(笑)。

橋田イメージですけど、「ひとりの人を強く動かせるアイデア」というのがプロモ。PRは、全員じゃなくていいんですけど「あるターゲットグループの人がうんうん、そうだねと言ってくれる」という感覚。

菅野社会全体じゃなくていい。ある種のコミュニティに対して機能していてもいいってことですね。

社員全員向けのPRでもいいし、日本という社会向けでもいいし、どこかのコミュニティに向けてでもいいのです。

菅野ということを踏まえつつ、ふりかえってみましょう。

<UHA味覚糖、ぷっちょ『ぷっちょあーん4Dゴーグル』>

デジタルエクスペリエンスに出てきたぷっちょはアクティベーションなのかって議論がありましたよね。

菅野デジタルエクスペリエンスの審査の時に、「ぷっちょ」をプロモで再評価することにしましたよね。挙手の結果アクティベーションで議論することになった。

MIKIKOまさか移されてるなんて…ってぷっちょさんは(笑)。

菅野募集の際の審査委員対談をした時に、「どこに応募していいかわからなかったらとりあえずどこかに応募してくれたら審査委員が適したところに移すから」、という宣言はしていたので。応募の仕方が多少間違っていても、なるべく褒められる方向にしたいなと思っていました。「ぷっちょ」に関して言えば、これがぷっちょを買うモチベーションになっているかですね。

菅野中村勇吾さんがKDDI、携帯電話キャリア『おもいでケータイ再起動』にワイルドカード(審査委員が1カテゴリー最大1作品、他の審査委員の点数如何に関わらず、高く評価しているので議論の俎上にあげたい作品に使えるカード)を出していたので、もう一度議論しましたね。

僕これいい点数付けました。auショップに人を行かせるという目的があって、それがちゃんと機能している。人を店頭にちゃんと呼んだということは、アクティベーションにおいてはめっちゃ効いてると思います。いい仕事だと思います。

中村昔のユーザー、昔の商品もちゃんと面倒見ますよ、貴方のコミュニケーションライフをずっとサポートし続けますよ、という角度だとPRと捉えてもいいんじゃないですか?

まあ、プロモーション。店頭だから。

中村じゃあそれで。

(笑)

携帯会社にとって携帯ショップに人を呼ぶって至難の業だから、そこを評価してあげたかった。

菅野行動を促していますからね。

尾上規模感というか、「おもいでケータイ」って1000人とか。まあここからどんどんやっていくと言ってますけど。ちょっとまだ小さすぎるのかな。

大八木「おもいでケータイ」はまだやってるんですかね。もしサービスで全国のドコモショップでやるようになれば、さっき嶋さんが言ったように人を呼ぶということになればさらに効果が出たのでは。

<広島県、広島の牡蠣『牡蠣の書きとり「広島牡蠣とり帳」』>

菅野八木さんのワイルドカードは、「広島県、牡蠣『牡蠣の書きとり』」でした。

これ素晴らしいよね。あほすぎる。僕は大好き。

菅野誰かのワイルドカードと、嶋さんの高得点作品が連動しがち。ワイルドカード発見機ですね。

これどっちかというとPRという感じがするんです。広島県というコミュニティの中で、「牡蠣ってそんなに重要じゃないよね」と思われていたパーセプションを、「牡蠣って俺たちの大事な観光資源だよね」と再び牡蠣の重要さを再定着させたことを考えると、非常にPR的な仕事。

菅野これはPRのほうに出てましたっけ?……出てませんでしたね。

まあ、牡蠣の消費量を増やしたというリザルトもあるから、そこでプロモーション&アクティベーションと捉えることもできるんだけど。でも広島県民が牡蠣をそんなに重要だと思っていないというのを、やっぱ牡蠣っていいよねというようにパーセプションチェンジさせたということを考えると、成果としてはPR効果が大きいとは思いますけどね。

八木青森の人は林檎という漢字を書けるとか、京都の人は鱧という漢字を書けるとか、自分の故郷について深く語れることが、何よりのブランドマネジメントなんじゃないかと。そういうローカルの価値が未来に向かって広がっていったらいいなあ。

中村これいいと思ったんだけど、ただ、書きとり帳ネタが若干、一時期ヒットしたうんこドリルっぽすぎて。それでちょっと下げました。

菅野広島出身と言えばMIKIKOさん。

MIKIKO書けない(笑)。

菅野この作品はこの後、審査委員の皆さんの同意でPRで審査されることになりましたね。

菅野ワイルドカードがもうひとつありました。上西さんが出した「シルバー生野、史跡生野銀山『GINZAN BOYZ』」

上西(笑)私にはかなり響いた。

菅野これにもちゃんと嶋さんも高い点数付けていました。

上西地方活性化ってすでに様々なPRとかプロモーションがされてきた中で、こういう方向もあってもいいのかなと思いました。地方独特の、史跡にある博物館の蝋人形とか、熱海の秘宝館みたいな施設とか、最高ですよね。そういうのでおもしろくしていくというのも、プロモ&アクティベーションとして評価してもいいんじゃないかなと。結果が意外と出てるというのがすごい。広告賞となるとおしゃれなものとか正しそうなものが評価されがちだけど、こういうものが評価されてもいい。私はここに行きたくなりました。

菅野これはでもどう考えてもプロモーションですよね。では、プロモーションとして、上西の熱烈な演説を聞いて、どう思いました?

“その他を褒める”僕らとしては絶対褒めるべき作品でしょ。

(笑)

上西プロモーションで褒めたい!

<ニッポン放送『はがきラジオ』>

イムはがきがラジオになるって別に大したことないって思えるんだけど、そこにメッセージや絵や写真が貼られたものを受け取ったとしたら、きっと捨てないだろうなとムービーを見て感じました。そういう意味で、まあ災害部分は余計だなと思ったんですけど、ラジオが送られてきて「せっかくだから聴いてみようか」と、ラジオを聴くきっかけにはなっていくのかなと。そのへんに置いてあっても違和感ないだろうし、そういう意味で印象はよかった。

リザルトはどうだったんでしたっけ?何枚配ってどれくらい広がったのかが書いてなかった気が。

保持販売も視野に入れながら、とありましたね。

ラジオ局ってラジオ配るプロモーション多いですからね。その一環か。そのやり方が新しかったということなのか?そこが大事ですよね。

菅野店頭で一回やったということなんですね。

イム「防災にラジオ」っていうのは、ちょっと余計かな

受け取ったら嬉しいけど、書くほうのモチベーションはどうやって上げるのかがちょっと弱いかも。

イム「ラジオになるハガキがあります」と言われたら使うのかなと思ったんですけど、防災目的では使わないのかな。

大八木まあプロダクトとして可愛いというのはあります。

菅野ハガキ贈るならラジオ付きのもあるよ、ていうほうがシンプルでよかった。

イムそっちのが全然よかった。

菅野子どもたちが、おじいちゃんおばあちゃんに贈るというのが若干演出しすぎかな(笑)

佐々木おじいちゃんたちラジオの価値知ってそうだし、持ってそうだもんね。

(笑)

保持もっといいラジオ持ってそう。

佐々木若者たちにラジオだったらわかるんだけど。形で満足しちゃったのかなあっていう感じがしました。

<ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング、リプトンブランド商品すべて 及び新事業開発『Lipton in Tea 紅茶新価値創造』>

菅野 僕、『Lipton in Tea 紅茶新価値創造』が、ちょっと普通の文脈の、よく出来たプロモーションって感じに見えちゃったんですけど、いかがでしたか?

イム僕の事務所が表参道なので、すごい行列になっているのを見たんです。通り過ぎながらめっちゃおいしそうと思って。

保持これ元々はなかったものなの? 僕知識がなくて。

あったけどそれを顕在化したということだよね。

大八木おしゃれな店とかには前からあったよね。ただこういう風にやることはなかった。

上西中国で結構見ましたよ。流行ってた。

保持これがそっちに行ったということ?

上西それはわからない。紅茶文化ってそんな日本にはないけど、外国にはすごいあるから、普通に流行っていた。このキャンペーンより前から外国にはあった気がします。

大八木それを利用したということですよね。

保持ジャーサラダみたいなことですか。

佐々木なんで表参道は並んでたの?もらえるから? それとも買うために並んでたの?

イム買うため。

佐々木お金払うのにここまで並ぶってすごいですね。

イムあそこイベントやるごとに、人気があるのかどうか顕著だよね。強烈に並んでました。

菅野そういう行動を喚起したってのは、プロモーションらしいプロモーションですね。

紅茶市場という大きい市場をちゃんと動かしたっていう結果がある。こんなにすごい仕事に、この順位でいいのだろうかと思っちゃいました。最初。

中村これって誰がオリジナルで考えたんですか。日本のこの人たち? リプトン社全体の戦略とかじゃないんですか。というぐらい大きいですよね。

菅野確かに。…これは、リプトン社に電話を…

(笑)

橋田聞いたところによると、自分たちでつくっているという説明がありました。文化をきちんと打ち立てるために、戦略とプロモーションをつくった。

菅野さっき上西が言っていたように、海外ではそういう文化があるけど日本にはあまりなくて、リプトンを売るにはそういった文化を輸入して売るのがいいんじゃないかと。

保持フォトジェニックなカタチにしたのがアイデアということですかね。それはいいなと思いました。「あ、可愛い」って思いましたからね。

インスタ映えするようにしてあげた。

上西リプトン発かはわからないですけど、先月中国でいっぱい見ましたね。

保持先月だったらこれの影響もあるのかな。

上西わかんないけど。けっこう流行ってたなあ。ああいう筒に入ってた。

保持それこそリプトンなの?

上西リプトンではなく、普通に。

保持ムービーを見ると、海外でも他のメーカーでも始めましたが発信源はここ、みたいな雰囲気。

上西そうなってましたね。

小杉デザインとしては評価したいな。佇まいは新しいし美しい。お茶に何か入れるって、そもそも中国?。

上西わかんないけど、あのボトル結構普通にあったな。同じ感じの。

ちなみに『ブルータス』の西田編集長と表参道を歩いていて、行列を見て「やっぱ紅茶特集まちがってなかった」とおっしゃる瞬間を見ました。

(笑)へー

菅野どこまでが誰のアイデアかというのは、あらゆる仕事で正確な判断が難しいところがありますね。

中村全世界的キャンペーンではないか、という。

菅野ああ……。

リザルトどうなっていたっけ?

大八木 4時間半の行列ができた。

ローソンのマチカフェの商品がこれによって開発されたという広がりもあった。

上西これが嫌いなわけではなくて、これがあったら美味しそう!おしゃれ!と買いそうな気がするんです。でも今、こういうインスタ映えするおしゃれな飲み物ってかなり開発されてて、コンビニなんかにもちょっと高級なスムージーとか、ああいう円柱形で売られているんですよね。前から他にあるような、その流れでつくったという気がして。“紅茶で”というのは新しいと思うんですけど。でもそんなに新しくは思えなかった。

佐々木パラダイムシフトは言いすぎだ、みたいな。お客様が宣伝するっていうのもよくある話ですよね。ちょっと言いすぎてる感じはある。そういうところで怪しさが……すごいことやってるのにもったいない。

大八木「飲み方でいい感じにやりました」と言われていれば「すごいな」「ほうほう」と言いやすいけど。

そうかな? 爆発的に変えたと言っていいくらいの規模だとは思いますよ。

大八木飲み方提案ですね

ちゃんとワークして行列をつくりましたって、意外とそう簡単にはできないことだから。人を動かすというのはアクティベーションの最も重要なところで、そこは褒めないといかんのではないかなと。

<京阪電気鉄道、ひらかたパーク『三文芝居』>

イムひらかたパーク『三文芝居』って。

菅野『三文芝居』は極端に評価が分散していて、一言で語るのは、難しいです。なんと1点から9点までわかれていましたね。

(笑)

菅野つまりグランプリだと思った人と、ビリだと思った人がいる。

保持それだけで魅力ある

このアイデアだけで、本当にやるっていうのがいい。

レイ(笑)これお客さんが本当に応募できたんですか?

佐々木って言ってましたね。

菅野これCMとしては、関西地区しか流れてないんですよね。

レイでしょうね。

菅野ただインターネットでは地区に関係なくすごいバズったので。

レイこれは褒めていいと思いました。

大八木「爆弾処理班」とか「三文芝居」とかいろいろありましたよね。

<ソニー・ミュージックエンタテインメント、DO NOT EAT-食べてはだめ-『擬態アイス』>

レイ意表をついていたのが、「DO NO EAT―食べてはだめ-『擬態アイス』」。これは結構いいと思いました。世界にも通じる。こういうのもあるんで。

佐々木ああ、保冷材そっくりのアイスですね。

レイこれはなかなか思いつかないアイデアだと思ったんですよね。

佐々木会社の冷蔵庫に入れておいたけどまだ食べられてない。

(笑)

菅野誰も気づかないですね、ここにアイデアを持ってくるのは。仮に色がつかなくても、レイさんのこの発言だけで生きていける、応募者は。

佐々木泣いて喜ぶ。

菅野これって日本的なアイデアですか?

レイ数年前のカンヌで、ルーマニアのチョコレートのブランドがパッケージを変えたというのがありました。

佐々木「ROM」、アメリカの国旗にするやつですよね。

レイパッケージを変えてプロモーションするって、アイデアは全然違いますけど、ちょっと似ているところがある。個人的にこれは結構イノベーティブだと思いましたよ。

菅野確かにアイスみたいな商品として歴史が長くて大きな発明がつくりにくい商品のプロモーションは難しいですね。たしかにこのアイデアは、話題になると売りにつながる感じがありますもんね。

佐々木これいまいちクライアントが誰なのかわからなかった。

誰の何をプロモーションしたのかわからないって議論になりましたね。

菅野えっ。ほんとだ。アイスじゃないんだって話になりましたね。

佐々木たしか、音楽もプロモーションしてて、クライアントが2社ぐらい絡んでた。ただこの話はアイスだけですよね。

保持僕、ブラックモンブランの仕事だと思った。違うんですね。

僕もアイスのプロモーションの仕事だと思ってた。でもACCの事務局に問い合わせたらクライアントはソニーさんだということを審査の時に言われて、曲を売るのが目的でと。だったらその曲を売るプロモーションにはなっていないのではという議論になりましたよね。

保持あそこまでプロダクト生産するとなったら、お金の出どころも基本的にはブラックモンブラン。

佐々木リザルトは完全にアイスの話になってましたね。

ACC事務局ドン・キホーテ限定で、すごく売れたという話もありました。

それがソニーさんのしたかったことならよかったんだけどな。

菅野トミタ栞さんについて一言も触れられてなかったでしたね。

そういうわけで、これは課題に対して答えをだしてるの?って議論になった。

保持ブリーフに書かれている課題自体、存在しない課題だった。そんなに困ってなかった。

八木アーティストとコラボレーションする話があがってきたみたいで、それに乗っかってプロモーションを行ったという流れ。

保持これを盛り上げるための外側の。

菅野このアイデアにアイスの会社はお金出してくれなかったけど、ソニーのプロモーションの一環という体裁にしてソニーに出してもらったのかな。

八木そっちはお金があって、なるべく広めるためにそのほうがいいってなったんじゃないかな。

菅野でもそうしたら、クライアント欄がソニーミュージックなのはおかしいですよね。連名になっているならまだしも。そしてソニーミュージックがやったこともちゃんと入れないと。

もともとの課題に対してダイレクトに応えているのかという議論をしましたよね。

保持プロダクト自体はアイス屋さんが出してるんですよね。これでは製造に関してまでソニーさんみたいで。

菅野そんな議論を経て、この作品は応募者へ問い合わせた結果、クライアントの課題と施策が結び付いていないということでファイナリストから外されました。

<CULEN『新しい地図』>

保持『新しい地図』のビデオ、審査会で見直しましたね。

レイ全然ピンとこなかったです。

佐々木僕も。これの良さを誰かに説得されたい気持ちがあった。遠回しに言うと。

レイ日本ぽいのはわかるんですけど、そもそもめちゃくちゃ有名人を、ブランドするとか有名にするとかどう出発するかって、正直どうでもいいことだと思います。

佐々木やってることはそれほど新しく感じないんですよね。有名人だから、それはそれなりに話題になるよなあ、という。

レイあと意義というか、社会性なメッセージも全くないし、誰のためになるのかも、彼らと彼らの事務所以外には………正直。

菅野応募ビデオの説明だけでは、どういう社会文脈の中でどういうアイデアをやりましたかということがわかりづらいのかもしれませんね。

佐々木ソリューションをブランディングする、とは・・・?

菅野日本的なハイコンテクストな部分が強いんだと思います。大きい事務所から独立して、カウンターカルチャー的に新しい文脈を提案したというところに、みんなこのプロジェクトの社会的なメッセージを見出してる。このムービーではそれについての説明がないっちゃ、なかった。

レイうーん、そうか。

佐々木プロモ&アクティベーションって別に人が動いたとか買わせたとか、その辺に応じてなくてもいいんですか。

菅野一番最初に出している定義は、販売促進だったり、行動を誘発するということ。だから行動まで着地しなかったとしても、態度変容から行動変容へ向けて変えていくということが定義されているので、そういう意味では僕はプロモ&アクティベーションにはふさわしくないかな、と思っていました。

レイPRですね、どっちかというと。

菅野PRですね、僕もそう思いました。

レイなにもアクティベーションしてないですよね。

佐々木そこに僕も違和感があって。

保持いろんなものを含みすぎていて、どういうフォーカスで。

佐々木炎上・解散までが仕組まれていたとしたら相当すごい。

(笑)すごい!

イムこれってSMAPをSNSに乗せて、それをやりきったというところで評価してるんですかね。僕もどちらかと言うと佐々木さん側の人間なんですけど。

菅野ちなみに分散が4.63なので審査委員の間で意見にすごく差があった。

佐々木ぜひポジティブな意見で説得されたかった。

グループから離脱した人たちがしっかり再デビューできるようにするというある意味ハードルの高い仕事ですよね。その課題をどういうアイデアで解決したのかエントリーシートやビデオでしっかり説明してもらえればよかったのかと。

佐々木僕も何か見逃してるんじゃないかと思って。

中村論理的には説明できないけど、「新しい地図」っていう名称自体とか、ああいう焦らし方で、あの3人でというのが漠然とインパクトあったと思います。それは何が、というのはなかなか説明しづらいんだけど。

MIKIKOSNSというメディア媒体を敢えて選んだということが。

中村SMAPとかジャニーズとか日本独自の文脈もあって。

保持そこがアイデアなのかもしれないですね。新しいネーミングをして「これが新概念」という流れをつくったことが一番大きなアイデアなのかもしれない。で、みんながそっちを応援するという。

大八木僕が思ったのは、もしかしてこれPRかなと。SMAPの人気者木村くんと中居くん、じゃない3人が新しい今の時代に合ってる人たちだ、という合意形成をした、というのが意外と神業なのかなと。何がっていうことじゃないけど、ただ世の中は動いたなという気がしています。

大八木の言うことはすごくわかる。とてもPR的な仕事。でも、エントリーシートでは広告をつくったってことが強調されてる。

東畑僕もこれ高い点数を入れて。ドメスティックな話ですが、「芸能界」って言葉あるじゃないですか。ものすごく特殊な業界ですが。その芸能界に対する、メッセージになっていると思う。芸能人=テレビと生きていく。ということに対する決別の態度表明というか。センセーショナルな空気は世の中につくったのは間違いなく。たしかに、プロモーションかどうかは、よくわからないのですが。

菅野海外の広告賞の文脈で評価されるかどうかは気にしなくていいと思っています。せっかくACCという賞があって、日本人で審査していて、日本のハイコンテクストなところも理解した上で褒めることができる。それがACCの重要な役割だと思うので。ただ僕も、プロモーションかどうかで悩みました。プロモーションだとするとあの3人の販促じゃないですか。このサイトが彼らの活動のプロモートになったかというと、ちょっとわからないなと思うんですけど。例えば旧来文脈だとテレビが中心だったけど、今度はSNSなどインターネットの文脈で活動して、カウンターカルチャーとして新しい芸能活動の定義ということは「新しい地図」というネーミングも含めてできていて、新しいなとみんなが感じた。応援したい気持ちを醸成したとは思う。それをプロモーションというのかだけは疑問ですが。

保持これPRに出ていましたっけ。

菅野出ていました。

僕はプロモーションだと思いました。新商材のローンチと一緒だと思ったから。だから応募ビデオとか説明は「新商品のローンチをこう成功させた」とシンプルに話してもらえるとよかったかなと。菅野くんがいうように、SNSを使ってみたとか、そういう今まで彼らが選ばなかった戦略を大胆に使ったってことを説明してもらえたらよかった。

中村この説明ビデオは参考であって、この説明ビデオを評価するわけじゃないでしょ。

菅野ではないです。

中村ビデオは拙いけどこのキャンペーン全体ということだから、「このビデオ拙かったね」と。

菅野ビデオはなくてもいいとすら言っているので、作品だけでも出してくださいと言っているので、そこは拾ってあげたい。

ビデオで「ここ見てください」って言ってるわけだから、それ見なくてどうすんのみたいな感じ、なかった?

橋田その感じで評価するのは、あってもいいとは思うんですよ。

大八木まあでも外国では評価が厳しいかも。ただ日本人として受けてるかたまりのような勢い感というのを、僕はそういう風に解釈して高い点を入れたんです。この解釈は合っている気がしますけど。

東畑飯島さんのメッセージというか。

大八木飯島さんすごいですよね。

東畑ある意味、大きなメッセージ出してる。

<Netflix、Netflix 人間、明石家さんま篇『Netflix』>

レイネットフリックスの明石家さんま。普通に広告として悪くないなと思いました。でも、ランキングは最初低かったですよね。プロモ&アクティベーションなのかPRなのかはあれなんですけど、ブランデッドコンテンツとして、意外としっかり見れたなと思ったんですよ。普通に見れたなと。審査しなきゃいけないから見たというよりかは。これ、審査以前に見覚えがあったんです。そんなにすごい、というわけではないけど。ただこれを絶対に入れるべきかというと、Y!mobileの「720 HOURS OF YOUTH」のほうが評価は高いです。

中村僕もいいと思いました。これって番組やったんでしたっけ。

動画とテレビCMでしたよね?

保持もともと「Jimmy」というドラマ作品が立ち上がりにあって、でも主演のひとりに問題が生じて…そういう時期でしたよね。本当は主演が二人そこに揃うはずだった。

菅野あくまでもプロモーションのコンテンツなんですね。Netflix内のコンテンツではなく。

橋田事情はあったのかもしれないけど、amazonが松本人志と組んで『ドキュメンタル』をやっているダイナミズムと、この借りてきた感じがまったく違う。

菅野“広告に出演している”レベルのってことですか?

橋田そうですね。あとNetflixの提供する動画の本質からちょっと遠い気がしてしまった。

佐々木Netflixの番組をユーザーに合わせてつくって、それをプロモーションしていくというほうが入会数が多いんじゃないかという気がします。

尾上そうですよね。Netflixが日本でまだあまり好かれていないというか、距離を感じられてしまっているのをどうするかとすると、さんまはテレビの顔で。

保持そのさんまちゃんの自伝的ドラマ『Jimmy』を、その時に公開するはずだったっていう立て付けなんですよね。

大八木親戚のおじさんみたい。

保持実際そういう狙いだったのにもかかわらず、ドラマの公開が後になってしまって、それでここだけ残っちゃったという。ここがブリッジになっていたにもかかわらず。

大八木製作費が10倍で、そこがPR系に流れている気がしたんですよね。逆に言うと僕はそれ以外にあまり受け取れなかった。Netflixユーザーとしてはズレてるなと思いましたけど。ただわざとずらして普通のテレビを見ている人に、テレビでは見られない本当のさんまの姿が見られる感じを広告としてつくったってことなんでしょうか。

保持アクティベーションかどうかというと微妙ですよね。

東畑キャスティングは若干新鮮だけど、“キャスティング”っていうくらいの感じ。

菅野広告としては魅力的だった。でも、それだったらNetflixの中で魅力的なコンテンツつくったほうが良いかもしれないってことでしょうか。

<東京急行電鉄『生活名所 池上線』>

イムサイト見ていて、まさに「生活名所」という言葉通り、知らなかった地元や近場の名所を知ることができて、足を運ぶきっかけになる。これ、絶対いいと思ったんです。編集が効いててデザインも洗練されてるし。

<日本マクドナルド、ヘーホンホヘホハイ(ベーコンポテトパイ)『ヘーホンホヘホハイ』>

菅野僕、すごく好きです。

大八木いいですよね。これ昔あった商品ですよね。

菅野そうです、昔あった商品で復活を希望されていたんですよね。商品名を『ヘーホンホヘホハイ』という名前にした。

橋田『ヘーホンホヘホハイ』という名前にシズルがあるのがいいな。

菅野美味しそうですよね。

保持ほくほく感がある。

菅野あと、ちょっと言いたい。

大八木パッケージになってるのが可愛い。

佐々木マクドナルドはだいたいそうなんでしょうけど、シェアされるところまで設計して名前とか商品とかつくっている。素敵なプロモーションだと思います。

保持すごいですよね。商品名がシェアされるって普通難しいですよ。

大八木商品を使って遊び道具にしていて、かつコミュニケーションにするというのは売りに対して直接的なプロモーション。普通、企業決定を広告会社が握れない。一緒にやってる感じでかなり尊敬しました。

菅野リプトンのとかロッテ『お絵かき爽ハッピー』にちょっと近いところがある。商品ごといじっちゃう。

大八木「商品を使ってなんかやろう」はあったけど、商品そのものをパッケージにして広告までっていう逆上がりは、そこまで今までできてなかった。

保持なおかつ、おいしさのシズルに少しつながってるのも相当すごい。

菅野それと『三文芝居』ですよね。

大八木それも同じ文脈ですばらしい。

東畑『三文芝居』よりも、簡単で早い。「爽」よりももっと素直。商品に直結している。すごく簡単なのがいい!

<ジャパンパーク&リゾート、スペースワールド『小さな遊園地が日本4位の集客数〜閉園さよならキャンペーン〜』>

佐々木「スペースワールド」はとてもいいですもんね。

保持いいですよね、ストーリーとしてもすごくいい。

佐々木つぶれるのが決まる前にやってほしかった。

菅野(笑)プロモーションする先が無くなったっていう。

大八木スケートリンクのやつですね、魚、「今年は普通です」っていう(笑)。本当にすばらしい。おもしろかった。

<日清ホールディングス、アクマのキムラー『チキンラーメンアクマのキムラー』>

菅野「アクマのキムラー」は、みんな抜群に点数高かったです。でも、おそらく国際広告賞ではピクリとも反応されない可能性がありますね。ACCにこのカテゴリーをつくったことで褒めることが出来る感じがして嬉しいです。

レイ僕はこれ低かったんですよ。

菅野レイさんと佐々木さんの評価は低い、という作品としても注目の。

佐々木ちょっと内輪ウケっぽいのが気になったんですよね。

レイこれ味は違うんですか?

菅野辛いバージョンです。

レイ点数僕はかなり低かったけど、今見るといいかなって思いました。うん、これは点数高くてもいいと思います。たしかにこれ海外ではわかんないでしょうね。

菅野あのキャラがわかんないですもんね。

佐々木ひよこちゃんが“いいキャラ”であることとかわかんないですもんね。ソーシャルメディアで性格が変わった姿を発信とか、がんばってる気はしました。

橋田とにかくコンテンツのパワーとスピードがすごいっすね。

脈々と続いてきたキャラクターの世界観をぶった切って(笑)。

菅野大事なものを捨てて(笑)。

<日清食品ホールディングス、カップヌードル『カップヌードル2017』>
(PRカテゴリーに応募されていて、PRカテゴリーでの議論を経てプロモカテゴリーに移動しています)

菅野嶋さんから、日清カップヌードルがPR的だったか確認させてくださいと。
PRカテゴリーでの議論時にまずそういう声が出ました。

次々事件を起こして、マスメディアやソーシャルを巻き込んでいくということだよね。
第三者を巻き込むことで企業や商品のレピュテーションを獲得して行く。そういう所がPR的だと思ったの。

保持たしかにそうですね。

“黒歴史商品”とか“群馬の海の家”は、売るためというよりは話題化のためだよね。リザルトに、カップヌードル全体の商品がどのくらい売り上げを伸ばしたかということが、統合的に言えているんだったらプロモーションでもいいと思うけど。そうではないわけだよね。そんな議論があった。

菅野もはやどうしていいかわかんない感じでした(笑)

橋田話題化しているというPR、パブリシティ取ったっていうPRの文脈はすごいあると思ったんですけど、広告がシェアされているだけという感じもするんですね。プロモーションとしては成功している気がするんですけど、新しい合意をつくったというのはあんまりないかな。

新しい合意形成を第三者を巻き込んでするのがPRだけど、メディアを次々巻き込んで、とにかく次々新しいことをやらかす日清のスタンスを合意形成して行っているということって話をしたね。

橋田広告シェアがすごい増えたというところではすごくいいキャンペーンだと思うんですけど。以前で言うと、どん兵衛を10分で食べたほうがいいかみたいな、議論を巻き起こすとかではない。おもしろいことが広がったというところまでなので、賞には入っていてもいいと思うんですけど、高く評価は難しいのでは。なので、この作品はプロモで評価したほうがいいと思ったんです。

大八木僕、それちょっと反論あって。合意形成がすべてPRなのかというと、そうじゃない気がしていて。企業プロモーションでここまでおもしろい施策を繰り出して、これだけ広がるっていうのも僕はPRの1つだと思うんです。全部が全部そのクライテリアでやるのも、ちょっと違うというか。あくまでもブランデッド・コミュニケーション部門としてのPR。ブランドのありようの中でどういう施策があって、そのブランドを魅力的に見せ続けるかというのも大事。その意味ではずっとおもしろいことをやり続けていて、コケていないというのはむしろすごいんじゃないか。一方で、プロモーションカテゴリーのほうが評価しやすいなとは思うけど。でもそのときプロモーションの議論は終わってたからPRで評価してあげなきゃって思ったんです。

菅野順序の問題ということでこの作品をプロモーションで評価するかは、PRカテゴリーの議論が終了してからボートするってことにしましたね。

大八木そのほうがこのキャンペーンに対してはフェアな気がしました。

菅野新しい部門でどこに応募していいかよくわかんない、というのは当然あるので、これは今後もフォローすべき。

菅野プロモーションの方でもう一回議論することになりましたって発表したとき、どよめきがありましたよね。

菅野で、プロモーションの議論がすでに終わってたわけですが、PRからプロモーションに移してこの作品について議論した。あれは意味あることだと思った。

大八木ちゃんとしてるよね。

菅野すごいがんばった。

大八木普通そんなことまでやらない気がする。

菅野いや、大事。来年出しやすくなる。なるべく褒めてあげたい。みなさんお手数おかけします。

尾上「三文芝居」規模のやつを、「カップヌードル」はいっぱいやってるんじゃないかという気がしたんですが。ここまで連続して当てるのは大変だなと。

「三文芝居」はあのシンプルな一点突破のところを評価している人が多いんじゃないでしょうかね。

菅野応募の仕方以前に、「三文芝居」みたいなアイデアは見たことない。アイデアの新規性というところで強いかなと思う。

佐々木「カップヌードル」はバズ時代のやり口を網羅していて、すごく話題になった。でも「三文芝居」は、よりプロモーション/アクティベーションっぽいという感じがしたんですけどね。

大八木難しいところですね。

菅野逆に合わせて出してしまったことで、じゃあ“山の中の海の家”と比べたらどうかとか。

保持僕もそうかもしれないです。すごくいいものとそこそこのを混ぜてひとまとめに出しているから。

佐々木幕の内弁当ですね。

保持生理的に反応しづらかったところがあったんで。

大八木本当にすごいんですけどね。アイデアというものがごちゃっとしてしまったということはあるのかも。

保持いろんなことやりました、って出品されていること自体あまり経験がなくて。どれを評価したらいいかわからない。

菅野ばらして出してもよかったのに。

大八木そっちのほうが正当に評価できる。

東畑ちなみに「カップヌードル」の中でどれが一番いい?

大八木全然売れなかったやつを再発売したのは。

保持一個一個良さがあるよね。

大八木やっぱり売れないんだ、ていうのがおもしろい。本当に黒歴史のまま。

勇敢だね(笑)。

菅野おもしろければ売れなくてもいいんだね。

大八木インテグレート部門とかあれば評価してもよかった。

保持そもそもPRに出そうとして、大きなパーセプションチェンジをこの群れでやったよという出品の仕方になってたから。プロモのカテゴリーに移った時に、より評価軸として難しくなった。

尾上「スペースワールド」もいろいろやってますけど、あれは1つのストーリーの中でやってるから、それぞれ効果的なプロモ&アクティベーションになっているということですね。閉園というものに進んでいくためのいろんな。

大八木そうなのかもね。

Cカテゴリー(PR審査)

<KDDI、携帯電話キャリア『おもいでケータイ再起動』>

菅野最大の難関PR部門です。中村勇吾さんからワイルドカードで『おもいでケータイ再起動』を提示してもらいました。

中村あんまりPRの定義わかってないで出してみました。

菅野プロモーションでも高く評価されましたね。

何かの概念、パーセプションを「ここからここにまで変えた」とちゃんと言えて、それによって人の行動とかが変わった仕事がPRの仕事。プロモーション的な成果を出している仕事もあるから、分類が難しいね。

菅野いやいやPR観点でもいい仕事なのであれば、全然評価してよいです。

保持携帯ショップは新しい携帯を買いに行く場所っていうパーセプションが変わったと、そういう理解をすれば。

橋田プロモーションとして継続して大きくするというのはすごくいいと思うんですけど、PRとして広がりが少なすぎるかなという気がちょっとしました。つまり、リザルトが弱いかな、と。

中村携帯メーカーのスタンスとして、新しい物ばかりじゃなくて、

菅野ガラケーの方も面倒見るよと。比較的ブランディング的なものも含めてですよね。

でもPR的にとらえると、コモディティと化したケータイが実は人生とよりそう存在なんだってことを教えてくれたわけで。すごいパーセプションチェンジを起こしたと言えると思いますよ。

<日清食品ホールディングス、Tokyo2020アクティベーション『日清食品は、近代五種を応援します。』>

大八木オリンピックの誰も気にしないところを取り上げたというのが、日清そのものだなと思いました。ウェブサイトのコピーがおもしろかったんですよね。この種目の点数配分が難しすぎて、誰も分からないっていうのを1つ1つやってて。

菅野これPRなのかなって頭で思ったんだけど、プロモーションでもないなって。何も売ってないしなって。

みんなに知られていない社会課題を顕在化するのがPRの仕事だとして、オリンピックに向けて知られざる近代五種という競技をみんなの知るところにする、と。それはこのカテゴリーで褒めてもいい。

菅野みんな人気スポーツに行く中。…いい話風にしようと思ったんだけど、挫折しました。

(笑)

上西ちょっと気になったのは、近代五種ってさっきコピーに書いてあったようにヨーロッパでキングオブスポーツと呼ばれているようなものなんですよね。そのブランディングとして、ふざけているのがちょっと申し訳ない。ふざけているのは好きなんだけど、ここでふざけてるのがちょっと気になった。

大八木たしかに、オリンピック始まった時にね。

中村これ、日清が「どや、ワシらこんなマイナーなスポーツに」「こんなところに注目する俺らおしゃれやろ」っていうツラをしているのはいいんですか?

(笑)

菅野なんで質問なんですか!

橋田大好きなんだけど、最終的に本当に何をしたかったのか教えて欲しい。本当に近代五種をやりたかったのか。ゴールはなんなのか。

大八木話題になりたかった。

オリンピックっていうフックを使って企業の話題化を図ったという狙いのほうが強いのかな? オリンピックの協賛って意外に難しいから。そういう意味でP&Gママのキャンペーンは秀逸だけど。ああいうコトの日清食品的仕事かと。

東畑日清のブランディング。課題の顕在化はしてないけど。むしろおもちゃを見つけた。

大八木そうそう(笑)。

オリンピックのスポンサーってなかなか難しいけど、そこをこういう風に逆手にとってやる。

大八木オリンピックのスポンサーの広告っていい感じのものが多い。そこは非常に評価したい。いっぱいあるじゃないですか、スポンサー。なんか全部一緒に見える、みんな「がんばろう」みたいな。

東畑2020スポンサーとしてのプロモーションのほうが素直かな。

大八木それもありますね。

菅野そうね、行動喚起ってなると難しいもんね。

大八木焦点は2020アクティベーションになりましたかね。

東畑オリンピックスポンサーの広告としては、ある意味すごい。

橋田でも得も言われぬ、「ごしゅぺらーず」とかも含めた、閾値を超えた褒めたいポイントは転がっている。

佐々木「ごしゅぺらーず」から思いついたんじゃないか、とか思いました。

プロモーションなんじゃないか。

佐々木たしかに日清のプロモーションですよね。

保持プロモーションに移します?って議論もしましたよね。

大八木ただ、人は動いてないよね?

菅野どっちも微妙ならこのままでもいいかな。という話になった。
菅野じゃあPRの中で評価しましょうかという結論に。

<日本マクドナルド、人事施策(バイト募集キャンペーン)『マックなら、大丈夫』>

日本マクドナルド「人事施策(バイト募集キャンペーン)」。働き方改革という社会的イシューがある中で、新しい働き方っていうのをちゃんとつくったすごい仕事だと思います。しかも働き方を変えることで企業のブランディングもしたということは、超PR的な仕事で、めっちゃ褒めてあげたいと思いました。
でも、応募ビデオがちょっとわかりづらかったからあの時みんなで見直しましたよね。

一同パワポ!早い早い!って話になりましたね。
(施策を説明するムービーがパワポで制作されたのか、非常に文字が多く高速で進むため付いていけない)

2時間のバイト枠をつくったというのがすごいアイデアですよね。それによってソーシャルな課題解決をしたし、女性の働き方自体を変えて、かつ実際に働き始めた人を出した。

大八木どう考えても、これから若い人は減るしね。その中で若い人の枠をやめたというのはすごい。

菅野端的に言うとなんなのかというと…

女性の新しい働き方を提案し、それを実行実現した。すばらしい。

菅野一番でかいPRとしてのアイデアとしては…

働きたいけど働けていない女性がいるという社会課題の顕在化。それをマクドナルド自身が2時間枠のバイト枠をつくるということで解決する。解決の仕方も、「そのやり方があったね!」という。相当かっこいいと思います。

東畑バイトは2時間って今までなかったの?

もうちょっと長時間働かないと。

イムマクドナルド自身が発案してやってるんですか。

大八木一緒につくってそうですよね。

電通さんが提案したのですかねえ?

菅野それはちょっとわからないです(笑)。説明を伺っていると、PRってこういうことなんだっていう気がしました。

これはすごく褒めてあげたほうが。あ、それから、広告宣伝じゃなくて人事のところからやるんだ、というのが超かっこいいと思うんですよね。

大八木あと広告に落とし込まれた「マックなら、大丈夫」というコピーと、おじいちゃんおばちゃんが出てくる広告ってそんなになかった気がして。若くて楽しそうでおしゃれでしょ、というのではない。そこを逆手に取って、この国の人口問題という社会課題を解決するっていう。

マジでゴールドあげてもいいぐらいの仕事だったと思います。

佐々木他のカテゴリーでは褒められないですよね。

菅野ただ贈賞式ではもうちょっとわかりやすいビデオ流れてほしいなあなんて話もした。

保持あの(映像の)スピードだけどうにかしてほしかったですね。

(笑)

東畑嶋さんが横で解説する(笑)

<ロコモチャレンジ!推進協議会『ロコモティブシンドローム啓発運動―7年間で成し遂げたこと-』>

ロコモチャレンジ!推進協議会「ロコモティブシンドローム啓発運動」もすごい仕事だと思っています。日本人の寿命は延びているけど、健康寿命じゃないから寝たきりになる人もいっぱいいる、そういう課題がある。それを顕在化して、寝たきりになる人を減らすための社会運動をやっている。7年間も続けていて、すごいことです。地道だけどいい仕事。

東畑7年間。

日本のいろんな企業を巻き込んで、ロコモ対策のための商品をつくっているということとか、国連や厚生省を動かしてこの問題を社会問題化した。おじいさんおばあさんになっても寝たきりにならないような生活を送ろうねと、啓発活動を7年間言い続けているし、その間いろんなプレイヤーを巻き込んで合意形成を図っている。これも地味だけどそう簡単にできる仕事ではない。

橋田日本って、「病気にならないように」とか内臓疾患系はしっかり言ってるんですけど、あんまり運動機能系を言わなくて。動けなくなるってかなり早死とのリスク関係が高いということを、内臓系から運動系みたいなところにシフトチェンジしているところがちゃんとしている。

東畑やってみたいアクションだよね。試したもん。

イム「ロコモ」って造語なんですよね。サイトに書いてありました。

佐々木「ロコモ」って確かに各社が使い始めましたよね。

新しい概念の定着だから。年をとったら寝たきりになっちゃうことを「ロコモシンドローム」という言語でみんなが認識して、行動を変える。それは社会に新しい根っこを定着させるという、すごい仕事です。

菅野これ一番最初に「ロコモチャレンジ推進審議会」を設立したと書いてあったんですけど、誰が設立したんですか?

医者ですよね。形成外科医の方々。

菅野ああ、中村耕三氏。中村氏が立ち上げたところにPR会社が一緒に入ってネーミングをしたと。

保持ネーミングとか、簡単に自分でチェックができるというアイデアを入れることでこんなに急速に認知が広がった。

そういうことだと思います。

どよめき俺もやった。やってみたくなるよね。(笑)

菅野これは説得力のあるビデオでした。

東畑え、ロコモティブシンドロームっていう言葉をつくったの。

複数名つくった。つくった。書いてありましたよ。

誰も問題だと気づいていなかったことに対して、「いやいや、長寿だけど寝たきりになっちゃうでしょ」という事態を認知させて、「それ問題だよね、なくそうね」という活動をしたと。
でも本当に、提出物の出し方難しいよね。プロモもPR領域も。デザインはそのままでいいけど。

佐々木つくった人が、こういうの出すの慣れてなさそうじゃないですか。

イムサイトにすごい説得力がありました。

大八木僕らはそれは追えるからね。海外文脈にするときはもう少し強くしたほうがいいかもですね。

保持今日のすごく勉強になった気付ききで言うと、これが賞を獲ると、そういう気付き「がメッセージとして発信できる気がしますね。なるほどPRはそういう意味性をもって捉えられて褒められるんだと。

菅野PRらしい。ネーミングも含めて。

大八木地味なものを拾って贈賞するというのは、勇気だなあ。これはメッセージになる気がします。だからちゃんと知りたいのは、「ロコモ」という名前もちゃんと考えてるんですよね。だとしたらもう、ここは。

保持実際にチェックできるアイデアは、目に見える形であるんで、そこも含めて。

イムこれを自分も広めたいと思ったんで、そういう気分が。

菅野知ってたフリはしたいよね。ああ、「ロコモ」だよねって。

(笑)

大八木やっぱり課題解決としては、それこそ総務大臣賞的な気分すらある。これから日本が衰退する中で、元気に生きる社会をつくるわけでしょ。

東畑まだ病気じゃない人に、名前をつけるっていうのは、発明ですよね。

橋田僕はちょっと純粋なPRすぎるかな、と思っていました。クリエイティビティという賞の中で、ロコモがどこまでクリエイティビティなのだろうか、と。ただ、みんなの意見を聞いて、クリエイティブ業界に対してのメッセージングとして、これを贈賞する意味はある。

大八木それが、すごいんですよね。ここまで点が出るんだっていう。

東畑名前を付けたか付けてないかが、ね。名前を付けてなかったら、違ったかも。

保持大きいですよね。僕もそう思います。

橋田はいい点を指摘しているよ。ACCをクリエイティブの賞と捉えるなら。でもね、あの誰でもやりたくなるテストの動作を考えたことと、「ロコモ」ってネーミング自体を考えたところは褒めていいんじゃないかと。

保持みんながやってみたくなるアイデアですよね。

大八木僕はクリエイティブだと思いましたよ。

もちろん第三者を巻き込んだりとか、長期にわたってサスティナブルに運動を繰り広げるみたいなところはそうなんだけど、ACCがクリエイティブを褒めるという要素は多分に入ってると思う。

菅野 NHK、ニュース防災『つくってまもろう』には高い点を入れている人がいました。どうしましょう。これは震災の時にダンボールでベッドをつくれますとか、そういうのですね。これは課題を見つけるというよりは、お役立ち情報。

大八木可愛いと思いました。

<セイコーホールディングス、企業広告『時を休もう。』>

切り口は多分にPR的だと思います。時間に対するみんなの概念に、時計会社であるセイコーが一石投じるという。働き方改革とかいろんなことが言われている今の時代に、時計会社がやるっていうオーセンティシティとか、レリバンシー等を含めて、PR的にはセオリーは合ってた。でも、自分はそんなに高い点を入れなかったのが最後のアウトプットがどれだけ人を動かす影響力を持ってたかってところが気になったから。

大八木理屈は合ってますけどね。

呼びかけるメッセージはいいけど、じゃあ時計を隠せばよかったのか・・・

大八木時計をずっと止めていたのかな?

佐々木場所と企業はすごくいいけど、やり方がもっとあったのかなと。

菅野この会社が、このコンセプトでやるというのは良さそうだけど。もうちょっとやり方が。

大八木そんなこと言われてもなあと。動いてるし。

保持もうちょっと具体的な、へーそこまでやるんだというアクションをやってたらビックリしたけど。

大八木電車止めたとか。

保持このぐらいはできそう。

<トヨタ自動車、NOAH『#金曜日の新垣さん』>

レイ僕が高く付けていたのは「トヨタ自動車、NOAH『#金曜日の新垣さん』」。

菅野高く付けている人も、すごく低く付けている人もいました。これをPRと捉えるのかでしたね。

佐々木分散が高いのはそこかもしれない。これだけ見ちゃうとPRではないですよね、どう見ても。

菅野PRに応募されてるんですけど、デジタルなのか、プロモーションなのか。そっちのほうが近かったのかな。

レイデジタル・エクスペリエンスに近いんじゃないですか、このカテゴリーで言うと。

菅野ソーシャルメディアでシェアしたくなる感じと、スマホの感じと、時代性を捉えたということですよね。そのへんの設計の仕方とか、金曜日に、とか…きっとオウンドメディアでやったからみたいなニュアンスでPRに出したのかな。

佐々木PRを正しく理解していないで突っ込んできている可能性はありますよね。

レイ僕はこれ嫌いじゃなかったです。PRのカテゴリーがいいのかというのは疑問ですけど。ここの3つだったら、デジタル・エクスペリエンスの方が合ってるかな。PRとは言いづらいかな。

たしかに何の合意形成をしたのかという観点の仕事ではないかもしれませんね。

菅野すごく可愛い。

保持それが合意なんじゃないか(笑)。

東畑国民的合意が取れてる。

イムこれって車出てくるんですか?

菅野「明日どっか連れてってよね」みたいなことを言うんだよね。

大八木結果はだから車と絡めようとはしていますよね。

イム相当バズってましたよ。

菅野だって可愛いもん。

大八木これがスマホで出てくるのはすごい。

佐々木いろんなメディアにとりあげられたのをPRだと思って出しちゃったんじゃないかと。

菅野「ぷっちょ」と同じで、男の人的な視点かもしれないですね。

イム女子はどう感じましたか。

上西可愛い。

菅野これ、PRに間違えて出しちゃったってことでデジタル・エクスペリエンスに移動する投票をするって話になりましたね。

佐々木広告なしで再生、それでPRと思っちゃったんじゃないかと。可愛いですけど、それほどでもないんですよね。可愛いですけど。

菅野とにかく可愛い(笑)。

<ロッテ、爽『お絵かき爽ハッピー』>

大八木プロモーションとしてはいいんですけど、それこそこれは「なんでも出しちゃえ」って出していたのでは。

この仕事が起こした概念のチェンジはどこにあるんでしょう?。

大八木商品を使って遊んだということが、メディアにのりましたというものですもんね。プロモーションでシルバーと評価されたわけで、わざわざここでもう一度はいいのではという議論があった。

菅野なるほど。

大八木「リプトン」と近いですよね。ああいうツールをつくって。

橋田“アイスで遊ぼう”という、商品とアイデアの連携がすごくいいなと思う。これをパーセプションチェンジと呼んでいいのかがわからないんですけど、ラテアートみたいものがアイスに持ち込まれた…でもそれもやっぱり、プロモーションなんですよね?

プロモーションですね。

大八木プロモーションでシルバーになりました。

<日本放送協会『ねほりんぱほりん』>

中村『ねほりんぱほりん』は番組なんですけど。

菅野さまざまな潜在化した社会課題を提起はしてると思いました。

大八木攻めてますよね。

中村番組としておもしろい。

橋田NHKが、この番組によって皮がむけ始めている感じはしましたよね。あの番組だけじゃないですけど、筋肉体操とか含めて。NHKのパーセプションがこの番組によってもちょっと変わってきている。

ブリーフも、そういうことを褒めてくれということでしたよね。NHKというイメージのパーセプションを変えたし、実際見る人も増やしました。

中村NHKが自分の制作物、商品を出して「すげえいい番組をつくって、NHKの評判上がってよかったね」という話で、アップルがアイフォンをつくって「すげえいいね」という話と一緒なんじゃないか。ちょっとその、広告というのとは違うんじゃないかと。

菅野これ番組の企画とデザインが広告会社のチーム。NHKだったら多分ACCに応募しようとならなかったと思う。

大八木この中のカテゴリーでは、「企業イメージ」に応募していた。NHKのイメージ形成。やっぱわかって応募してましたよね。

一同難しかった。

菅野企画した側からすると、広告会社発で商品開発するのに近い感じでソリューション出したという認識なんでしょうね。

世の中の概念やパーセプションを変えるために、商品開発という手口を使ってもちろんいいんですよ。

大八木それを広告の企画者がやっているのはすばらしい。

橋田この番組、本当に若い人にめっちゃ人気ですよ。テレビというよりネットで接触している気がしますけど。

東畑広告の人の新しい拡張の仕方、かな。

<そごう・西武、全国一斉母の日テスト ・父の日テスト『母の日&父の日キャンペーン』>

これは何をしたかったのかちょっと伝わりにくかったですね。新しい親子関係を、今までの親子関係から変えたいみたいなことだとわかるんだけど。

MIKIKO「母のことをもっと知ろうよ」。

尾上母の日の認識を変える。ということですかね。

新しい習慣をってことだね。

橋田最後のコピー自体がパーセプションを変えようとしている意志を感じた。物を贈る日じゃなくて、知る日にしようというのが。

保持それを、そごう・西武が言うのがカッコイイメッセージだなという気がしますけど、PRという意味だとどういう風に…。

尾上新聞かなんか出したんでしたっけ。

子どもが新聞をきっかけに、母との会話を生み出す。母と話す日にしようみたいな。

橋田ダイレクトに書いてあった「知る日にしよう」という意味が一番強い気がしました。

大八木この東大生はなんで集められたのでしょう。

橋田テストだから、頭がいいっていう存在の東大生に受けさせてっていうPRの仕掛けになってるんだと思います。

東畑やってることは正しいしいいことなんだけど、どうやってリンクするか。話題になっているかという入口のところが意外と弱いなと思ったんですよ。

大八木同じく、評価が難しかったな。

東畑テストを自分でやれればいいと思うんですけど。

大八木自分でやらせる施策があればいいと思うんですけど。東大生38人のムービーを見せられても。そういう人がいました、ということしか思わなかった。

<フレーベル館、企業ブランディング『0点ミュージアム』>

菅野僕、「0点ミュージアム」はファイナリストにいてもいいんじゃないかと思ったんで、皆さんにも伺った。

レイ可愛らしいアイデアだな。

すごいPR的だと思いますよ。現状の教育っていう概念じゃなくて、もっと想像力を大事にする教育がいいよねっていう価値観のシフト。それをこの「0点ミュージアム」というクリエイティブなアイデアで、パーセプションチェンジさせようという。結果、メディアも巻き込んで訴求行動がなされていて、非常に構造はPR的。

菅野正しい答えは一つじゃないという問題提起をしている。ファイナリストくらいはいいんじゃと思いました。

<ポプラ社『答えのない道徳の問題 どう解く?』>

レイこれの広告主はポプラ社という出版社。

菅野今年から道徳が必修になったから。

レイコンテンツとしても悪くない。

菅野これ「PRってなんだ」って話だな。

佐々木ペイドメディアを使わずにいろんなところで紹介してもらったっていうことだけをPRって思ってる人もいますよね。

菅野日産自動車の「ProPILOT」も、ファイナリスト落ちしそうだということで議論しましたね。
しかし、応募ビデオの達人すぎますね。どんだけうまいんだ(笑)

日産が数年かけてやっている“自動運転といえば日産”というパーセプションをつくる活動の一つと認識していていい。自動運転のパーセプションをつくるのはすごい仕事だと思うんですよ。その合意形成するための手段がバイラルムービー、というか実際にそういうホテルをつくってそこに宿泊してもらったというやり方。

菅野この椅子のやつとか、自動運転模倣シリーズですね。

そうですね。CMから椅子のバイラルムービーから、ホテルをつくることから含めて、一貫してパーセプションを取っていくための施策。

菅野昨年のインタラクティブ部門の審査でも落合陽一くんに突っ込まれてましたけど、日産の技術をそのままインストールみたいな言い方は言い過ぎでは?本当は日産の技術をそのまま使っているわけではなくて、厳密には別のやり方で例えていますよね。

本当にPRを突き詰めていくと、ファクトを使って解決するのが正しい。だからマクドナルドみたいに本当に人事制度を変えて、リアルに解決していくほうが正しいと思うけど。まあこれは表現でそれを乗り越えているってことですよね。

菅野バズムービーとしてはすごい広がる。

大八木あとはムービーを越えた、本当に泊まれるということが、椅子のよりは一歩先に進んでいる。あと、あのスリッパは履いて壊れないのかな。(笑)

保持そのシーンがないのはやだな。

大八木座布団ホントに座れるならおもしろいけどね。

ここはカンヌじゃないから別にカンヌと一緒にしなくていいんだけど、カンヌのPRで議論によく出るのは、フィクション的な要素を含んだコミュニケーションをPRの領域でしていいのか問題。

大八木仕事の効率上がるまではいかないんじゃないかな。

保持むちゃくちゃ非効率。

佐々木さっきのグリーンラベルと同様に、自動運転を続けて表現しているのはいいとして、今回は、椅子からのアイデアのステップがそんなに伸びていない感じがしたんです。順当な第二弾という感じがした。PRはそれでいいんだという話もあると思うけど。でもどうしてもアイデア面で見ちゃう。同じものの続きって感じ。

大八木ただこのツイート、リツイートはすごいですよね。外国の人が好きな感じに。

保持わざと旅館にしてクレイジーな感じ、っていうのは狙ってやって成功してるのはすごいな。

大八木うん…座れるといいな。

菅野(笑)そこなんだ。

中村真面目に使うというよりは、「ぷっちょ」みたいなノリなのかな。

ああ。

中村イケてる「ぷっちょ」、みたいな。

<ソニーミュージックエンターテインメント、CHAI『N.E.O.』』>

MIKIKOソニーミュージックの『CHAI』ってどういう形で応募されてたんでしたっけ。

菅野ミュージックビデオなんですけど、コンプレックスを味方にしようと投げかけたという文脈ですね。そもそもCHAIというアーティストのメッセージ自体がそうだし、曲もそうなので、そういうミュージックビデオをつくったよと。

橋田僕もいいと思っていました。彼女たちの存在自体がPRっていうか。もし「コンプレックスはアートなり」っていう広告メッセージを書いて、そこにこの子たちを連れてくる形だとしたらすごく嫌な感じですけど、彼女たち自身がそう発信するのは世の中にとってすごく意義のあることだと感じました。こういうメッセージって、化粧品会社が言い出すと広告チックになると思うんですけど、これは彼女たちが言っている。自己発信がすばらしい。

世の中のコンプレックスに対する考え方を変化させる。「それはコンプレックスじゃなくて魅力だよ」っていう楽曲やプロモーション自体がパーセプションチェンジだとして、リザルトがどこまでどういったかですよね。やろうとしていることはすごくリアルだと感じました。

大八木このバンド自体がPR。

菅野そうですね。この施策のアイデアなのか、CHAIそのものなのか、楽曲自体がどうなのか、切り分けが難しいなと思ったんです。コンプレックスと可愛いという概念の定義みたいな。「NEOかわいい」という発信はすごくいいな。

保持「NEOかわいい」はいい言葉で、CHAI自体についていても違和感がないし、あのフィルムもいい。

菅野「NEOかわいい」ってコンセプトのアイデアが応募されているのだと思って、最初満点入れかけたんだけど、冷静に考えたらブリーフの中で「NEOかわいい」ってコンセプトを体現するアイデアだと言っていた。

保持それはアイデアというよりブリーフ。

菅野かなあと思って悩んじゃって、微妙な点数入れたんですけど。

大八木PVそのものなのか、CHAIという存在そのものを評価するのかで点数が結構変わる気がする。

菅野CHAI好き的には入れたい。

MIKIKO「NEOかわいい」というコピーが後押しして彼女達の存在感はすごい印象づけられましたよね。

上西(私は)CHAI自身がすごい好きで、演奏や曲もいいじゃないですか。だからこそ“PRという感じ”にはちょっと、どうしようと思っちゃったんですよね。誰かが陰で「PRです」とやってるのか。それを褒めなきゃいけないのか。それともCHAIそのものを褒めるのか。

菅野CHAIという存在が応募されていると気分が違うよね。

上西そう、なんか違うなあと。

MIKIKOあ、陰に誰かいたんだ、みたいな。

上西そう、CHAIが応募するわけなくない?みたいな感じが。どういうこと?みたいな。

菅野「NEOかわいい」というコンセプトとともにデビューさせている点は、PRとしてすごい。

東畑僕も5点入れてたんですけど、ちょっと意外と普通。CHAI自体という風に捉えたほうがいいと思ったな。

佐々木リザルトってどう出てたの。あくまでも音楽のプロモーションなのか。

「NEOかわいい」という概念がどれぐらい定着したかが。

佐々木書いてなかった。

感覚値になってしまっているところがありました。

保持空気が生まれた。商品名はCHAIで出てるんでしたっけ。

菅野広告主がCHAIじゃないか。

MIKIKOそれでどうやって出してるのかなというのが気になって。

菅野そうですね。なんかすごく近そうで、違う気もするという。

でも、新しいと思う。ミュージシャンやアーティストが発信する概念で世の中変わるというのは、PR的と捉えていいと思いました。

菅野PR部門でCHAIが入っているのはすごくいい気がしました。

大八木PVつくった人もそうだけど、CHAIとつくった人と、両方か。

尾上CHAIはこれをチョイスしたわけですからね。CHAIとしてはいいと思っているわけで、問題はない。

菅野CHAIにクラフト賞をあげるみたいな感じでしたね。楽しかった。

よかったよね。

<Electronic Arts 『Simcitey Buildit School of Politics』>

橋田Electronic Arts 『Simcitey Buildit School of Politics』が引っかかりました。政治という超難しい課題に対して果敢に行ったなという印象が残っていて。これってどうでした?

人気のない職業である政治家を、人気のある職業にしようというパーセプションチェンジのために、ゲームという手段を使っている。だから合ってはいるけどその成果をどうみるかを議論したね。

橋田小さめだった。

やってるイベントの規模とかが?。

アプリが50%伸びて、結局どれくらいダウンロードされたのか書いてない。それがどれくらいだったのか。でも、難しい課題に挑戦していることは評価したいよね。

菅野とっても広告賞っぽい文脈でしたね。

橋田広告賞っぽいですけどね。意外と地道な活動したんだな、と。

大八木シムシティをダウンロードしてよ、っていうことですよね。

橋田ていうキャンペーンなの?

保持リザルトがそういう書き方になってましたね。

大八木政治じゃなくて、シムシティをダウンロードさせるためのネタとして。むしろ課題を大きくして結果がどこまでついてきたのか?そこが気になりました。

中村シムシティはいいゲームですよ。

(笑)

保持そもそもシムシティ自体そういう目線がありますよ。そういう視点で楽しむものなんで。

大八木だから逆に難しくしようとしている。バナー広告打ったほうがダウンロード数伸びるんじゃないかな。

リザルトに「政治に関して興味を持つ人が増える」という一文が何でなかったんだろうね。最初それが課題ですって書いてあったからなあ。

佐々木政治の課題に取り組むようではありつつ、でも販促キャンペーンになっていますよね。

菅野政治に関しては、糸口を示すという…。そうですね、確かにシムシティのプロモーションか。

尾上ちょうど3年くらい前に千葉市長にシムシティをやらせるっていう記事があって、その時は千葉市長のフォロワーも増えたし、ゲームのダウンロード数も伸びてたみたいですし。そっちのほうがわかりやすかった気がします。

大八木ですね。市長がこれを使って理想の都市をもう一個つくりました、とかそういう風になってたら良かったかもです。

<高崎市、シティプロモーション『絶メシリスト』>

尾上結構こういう地方のっていいところばっかり見せがちですけど、そうじゃなくてむしろネガティブというか、汚い店だから人が来ない、というところを見せている。「絶滅させるな」という意識をつくることで、みんなに行かせようとする。これって全国でやれることじゃないかなと。全国でやってほしいなと。

菅野名前がいいですね。

大八木行かないとつぶれちゃうもん。しかもつぶれる間際になって「よかったのに」とか。

一同(笑)言います、言います。

大八木流行ってない店で好きだったら、食べ続けないと。

菅野高崎以外でもやってほしいですね。

橋田人のレーティングで食べる『食べログ』みたいな選び方から、絶滅しそうな店を選んでみようという、考え方のチェンジができてると思うんです。地方に行くと絶対食べログとか見ちゃう。そういう既成概念的な行動を変えようとしてますよね。

大八木後継者が2人見つかったというのもいいですよね。

MIKIKOすごいことですよね。

大八木普通はなかなか。同じ文脈で「黒保根おいしいお米をつくる会」も似た感じ。今世の中的に、若い人だけに目を向けていてもこの国がなかなか成り立たない中で、そういう眼差しで光を当てるというのは、PRとしておもしろいかもしれない。

これ自分たちのやつだからそんなにしゃべりませんが、注目されなかった資産というかリソースを宝に変えるという。

大八木言葉がいいですよね。

保持アイデアが「絶メシ」という言葉に全部詰まってますよね。

大八木さっきの「ロコモ」もそうでしたけど。「絶メシ」っていうのが。

菅野発見した部分より、名前がいいな。

中村ビデオ見て話はわかったんですけど、そんなに行きたくなかったかな。汚そうだな。注文来なさそうだな、とか。笑

大八木ああ、絶メシ自体がそんなおいしそうじゃない?

菅野たしかにメニューが1個しかないお店、おいしいのか気になる。

中村おいしくなくて廃れるのを、超える何かを感じなかった。

大八木本当においしかったらいいですよね。

(笑)

大八木でもここは、なんだかんだおいしいんじゃないの。めっちゃ普通なのかな。

菅野さんざん乱獲して、絶滅危惧種になると突然みんなヒューマニティ発揮する感じがここに応用されてる感じがしましたね。

東畑物好きがいそう。

大八木B級グルメや孤独のグルメとかで発見しているあのおいしさがどれくらいかというと、普通のナポリタンだったり。

菅野「きたなシュラン」のほうがおいしそうに見える。

中村価値あるものに見せようとしているのか、ちょっとネタにしようとしているのか、ぼやっとしてるからわかんない。まずいもんとして楽しむのか、いいものとして楽しむのか。

菅野たしかに、CMとしてフィーチャーされていた店が本当につぶれそうだったら。

佐々木でも食べログとかで有名とか、シェフが一流とかとは違う評価軸。レアだったりつぶれそうだったり、という違う評価軸をつくったのはいいんじゃないですか。そこがおもしろい。

東畑月曜から夜ふかし、とかを見ている感じに近い。

<ヤフー、選挙情報ウェブサイト「聞こえる選挙」>

「聞こえる選挙」は残したほうがいいと思いましたね。世の中が発見しえなかった課題を顕在化して、本当に政党を動かして人々の投票行動を変えようとしている。ファクトを見つけてきて、それを世の中に顕在化して行動を変えるという、PRのお手本みたいな仕事でしたから。

イムデジタルでもよかったかもしんない。

菅野デジタル・エクスペリエンス部門のファイナリストにいた?結構微妙な位置にいたかも。

佐々木下のほうにいました。ここでしか褒められないんじゃないかな。

<サイバーエージェント/CULEN、AbemaTVと新しい地図「72時間ホンネテレビ」>

イム「新しい地図」は、(「新しい地図」と、「72時間ホンネテレビ」で)分けて出していた意味は?

中村出してる主体が違うんでしょ。「新しい地図」は「新しい地図」自体で、「72時間」はabemaTVでしょ。

abemaTVのPRになっていたと思います。

MIKIKOまあ、相当。話題にはなりましたね。

大八木あれでabemaTVが知られたというのはありますよね。

橋田“テレビじゃできないこと”という、ネットテレビのパーセプションをつくりあげた感じがしました。

ネットテレビの新しい概念。

菅野「72時間ホンネテレビ」の解説画像が、森君との再会の写真1枚(笑)

たしかに「これはテレビじゃできないだろ」っていうのを。

菅野最たる例のシーンですね。

上西私もこれきっかけにアプリ入れた。

菅野実際にこれでabemaTVに初めて触れた人はいるんじゃないかと。

人々の行動を最終的に変えさせましたということだから。

イム個人的になんか、どうせだったら別のやつを上げて褒めてあげたいと思った。

MIKIKOプロモーションのほうには残ってなかったんでしたっけ?。

菅野プロモーションでは、ファイナリストでした。「新しい地図」ってものすごい評価がわかれたんですよね。

東畑一番難しいよ。

<ジャパンパーク&リゾート、スペースワールド『小さな遊園地が日本4位の集客数~閉園さよならキャンペーン~』>

なんでもない遊園地を俺らの遊園地にしたっていうパーセプションチェンジに捉えることもできるけど、どちらかというと入場者数を増やしたという観点からみればアクティベーションの仕事として褒めてあげたほうがいいのではと思ったの。

佐々木アクティベーションでゴールド獲りましたよね。

アクティベーションとしてはものすごい人を動員したからね。PRの技術としては、たしかに、パブリシティはすごい。

菅野ここではPRとしての評価を話したかった。

これもさっきの「カップヌードル」に近いですよね。パブリシティがいっぱい出て、ということじゃないですか。そこをどう捉えるか。もちろんパブリシティをいっぱい出す技術のおかげで、第三者を巻き込んで、遊園地をみんなの遊園地にという難しいことをやり遂げているから褒めていいと思うけど。パブリシティが目標になっているとそれは違う。

橋田ソーシャルメディアの時代にいいなと思って。「カップヌードル」は広告がただトレースされているシェアが多いこと。こっちは、感情のところを揺さぶってきているから、悲しいなとか、楽しいな、というみんな感情の合意をつくっている感じがして。そこはPRと言っていいのかわからないんですけど、ただのプロモーションよりPRとしての褒めポイントとしてあるんじゃないかなと。

中村「絶メシ」とかも思ったんですけど、日本がどんどんこれから衰退していく中で、衰退とか閉園とか閉店とかいっぱいある。そこの見せ方、どうポジティブに見せるかという。そういう価値観をつくろうとしている最初の方の一歩なのかな。

菅野難しい。

一同そうですね~・・・難しかった・・・。

<GODIVA『日本は、義理チョコをやめよう。』>

(デザインカテゴリーに応募されていて、デザインカテゴリーでの議論を経てPRカテゴリーに移動しています)

(デザインカテゴリーでの議論された結果PRでの受賞が決まった作品)

橋田GODIVA『日本は、義理チョコをやめよう。』が…僕広告としてすごい好きなんですけど、話し戻るとPRなんじゃないかと発言しましたよね。

菅野PRに出してなかったんだよね。

保持それは僕も意外でした。

橋田義理チョコという概念を変えてチョコレートに注目を集めるという、設計がすごくよくできている。デザインでこれを評価するとなると、ハテナが。広告的にもすごくいいんだけど、PR的な評価のほうがいいのではないかなと。

中村グラフィックデザインとして見ると、普通。

菅野これは投げかけですもんね。提言というか。

東畑さっきの安室ちゃんも若干近いですよね。このタイミングに当てたっていう。メディアを含めて。それをデザインとも言うし。

保持なるほど。

東畑メッセージの内容。時代性。新聞というメディアの選び方。
   その設計図は、素晴らしいですよね。

菅野デザインカテゴリーで褒めることに関してはどう思うかとの問いかけもしましたよね。同時にみんなが指摘されたようなPRで褒めるということでカテゴリー移動のボートもした。

橋田新聞広告を選んだということもPRっぽくて秀逸だな。“意見をする”媒体を選んでいる。

保持展開のイメージを見ると、「あげるって楽しい」ってちょっと派生的にやってた。派生的というか、並行してやってたところがキービジュアルにもなってるんですね。

菅野皆さんの支持をえて「GODIVA」をデザインカテゴリーからPRに移動させましたね。 

ただ、すごく考えてデザインカテゴリーに出してたんだよね、たぶんね。

菅野どうなんですかね。

橋田デザインとして出したにしては説明が多かったですよ。なんか。

菅野キャンペーンっぽい説明になってる。

プリンテッドの広告として見てほしいって意図だったと思う。そういう意味では世の中に一石を投じるプリンテッド・アドと言えるからここでやってもいいし、PRも今までのバレンタインの概念を一気に変えるという概念チェンジを狙ってるからありだし。PRで評価をするっていうのは、第三者を巻き込む、議論を起こすというところがすごく大事で。SNS上で議論が起きているところとか、評価してしかるべきと思いました。

菅野まあ一個しか出していないんで、どっちで褒めたほうが点数が上がるかということを議論して、決めてあげるのがいいかなという議論になった。

デザインよりPRのほうが上位に行きそうって感じがありましたね。

橋田スッキリとわかりやすいPR。

菅野 今日中に審査が終わらず帰れないんじゃないかって話をしつつ、最終的に採決してPRカテゴリーで褒めることになりましたね。

Dカテゴリー(デザイン審査)

菅野デザインカテゴリーは一番数が多くて、153の応募ありました。

佐々木デザインカテゴリーの基準とは? カンヌのデザイン部門のようなピュアなクラフトやデザインを見る部門なのかどうか。それとも、ブランデッド・コミュニケーション部門の中のデザインなので、いわゆる広告的な性能も判断するのか。どっちなのかなと思っていました。

菅野デザインという言葉の定義を厳密にすること自体が激ムズですよね。我々の仕事は全部デザインじゃんとも言えるし、デザインを狭い意味で捉えて特定のクラフトともとれるし、様々な場面で色々混濁していますよね。僕自身も明快に、完全に、定義はできないので、何が褒められるべきか、審査委員みんなで議論しながら進めていきました。

大きくは「ブランデッド・コミュニケーション部門の中のデザインカテゴリー」というように定義をしているので、あくまでも“ブランド”のためのデザインですね。何か表現の対象となる企業、ブランド、もしくは人でもいいですし。対象に“機能や成果を出す”ことを目的としたデザインを評価したいと考えました。でも、それだけでも十分広い。プロダクト自体のデザインか、ポスターのデザインか、かなり多岐に渡ります。できればどの方法が偉いとかではなくて、様々な角度でのデザインが褒められるといいなと希望はしていました。最初の年なので、応募作品にも偏りがあるかもしれなかったし、そこらへんも含めて議論しましたね。
どっちかというとデザイナーのクラフト部分だけを見るのではなくて、“広告として機能している”ことは最低ラインにしたかった。なので仮にNPOのポスターがあったとしても、そのNPOにとって、そのNPOが伝えたいことに、受け手にとって、ふさわしい表現になっているかとか、社会的な文脈があるかとか、どういう意味付けができているかということを、ちゃんと踏まえて表現できているかを問いました。

<NHKエデュケーショナル、ミッツ・カールくん総集編『みつかるEテレ』>

菅野上西さんが「ミッツ・カールくん総集編」にワイルドカードを出していました。

菅野判断が難しかったですよね。素晴らしく魅力的な映像だし、個人的に大好きなんですが。

上西これテレビで流れている短いムービーの総集編だと思うんですけど、こういうのがちょいちょい流れることで、NHKの良さ、「Eテレっておもしろいよね」という感じが蓄積されるなと思って。Eテレは色んなイラストレーターとコラボしてつくってるシリーズもあるんですけど、これは1個のキャラクターをつくってやっているのがいい。でも、こういうのってデザインの文脈で褒められにくいと思うんです。なのでこのカテゴリーだったら褒めたいなと。落ちそうだったのでワイルドカードを出しました。

実際音源はいいなと思いました。

上西可愛いし、見てて楽しい。

<明治『明治ザ・チョコレート』>

八木事前投票のランキングを見たら惜しいなと思ったのが「明治ザ・チョコレート」。コンビニ商品のパッケージは制約だらけでちょっと難しい環境だと思うんですけど、プレミアムなチョコレートとしてのコンセプトがちゃんと見て、触って、感じられた。見た目のグラフィックデザインが良いとか悪いとか言うよりも、商品開発のチャレンジというか、仕事の在り方を評価してファイナリストに入ると、来年へのメッセージにもつながるのかなと思いました。

菅野これはこの商品のデザインそのものを応募されたんですよね。

これは判断が難しかった。デザインの美しさはわかるけど、これが店頭で機能していたかどうかとか検証の必要があったね。

佐々木普通のコンビニだとこういうパッケージは受け入れられないという話を聞いていて。でもチャレンジしてる。実際はちゃんと売れてるし。

保持結構見るなという印象がある。コンビニの中で目立ってるなと思いました。ちょっと手間のかかったものなんだなというのは伝わってくる。いわゆるチョコレートシズルとは別のところをトライした感じが僕は好きでしたね。

佐々木チョコそのもののデザインもいいですよね。舌触りとか香りを含んで。

八木テクスチャが入ってますよね。模様とういか。

佐々木よく設計されてる。

<Red Bull『Red Bull Music Festival Tokyo』>

小杉Red Bullってばらばらに出されてたけど、合体しちゃダメなんですかねって話をしましたね。まったく同じタイトル『Red Bull Music Festival Tokyo』で。

東畑映像とグラフィックデザインで別の応募でしたね。

菅野統合的に応募できるようになってるんだけどね。

菅野小杉さん的にはまとめて評価したほうがいいと思われた?

小杉そのほうがいいんじゃないかなと思いました。

大八木ファイナリストで点もそれぞれの点が近かったね。

小杉でも出してる人が違ったから。

菅野全体としてとても良い仕事だからひとつのプロジェクトとして評価して、受賞される人数を増やしましょうということで上位の点を活かしましたね。

<セブン銀行『ATMの想い』>

イムセブン銀行『ATMの想い』にすごく高い点数をつけたんです。ATMの前に立つとなぜか緊張してしまう、後ろから見られるんじゃないかとか。そういう固いイメージを持っているが、実は普段すごくお世話になっていて、実は安心できる存在だったりする。擬人化した文章で書かれていて、「ああすごくお世話になってる」「気を遣ってくれている」という気分にさせられるグラフィックで、非常に好感を持ちました。

菅野これはどういったところに掲示されていたんでしょうね。

イム街中では見かけなかったです。イラストの構図とかもよくこの見え方を見つけたなと。

中村これ僕いいと思いました。純粋にグラフィックとしておもしろい。モチーフがATMというのも。

菅野おもしろかったですね。これ、誰向けに、どう何を伝えたのか。

イムブリーフ的には、セブン銀行のイメージアップ、ブランディングみたいな。

保持割と大きいポスター。ということは駅貼りとか、交通とかで出たんですかね。

イムあの言葉よかった。「24時間ひとりぽつんと待っているATM」みたいなの。

大八木優しいよね。ATMで金おろすのなんて、2分くらいだもんね。
ただデザイン単体で褒めるというのもね、それはそれでアリと思うんですけど。

橋田僕も最初高い点数をつけた。それはクラフトが良かったから。だけど、この部門の「デザイン」ってどこを評価するのかなと。ブランデッドとか広告としてのコミュニケーション力みたいなものを話すのであれば、点数下がるのかな、と下げちゃったんです。このデザインで何をしようとしているか、が不明瞭だった。

イムあの意図を見てあれを見た時に、僕の中でイメージが上がったから、成功しているなと思ったんですよ、そういう意味では。

保持セブン銀行ってATMの手数料だけで稼いでいる稀有な銀行だから、他の銀行に比べてATMの存在感を増していくというのは戦略上正しい。普通の銀行だったらありえない戦略だなと。もし駅貼りとかしていたなら、僕は行き当たってないのでわからないんだけど、普通にそういう目的を持っているってありそうだな。

佐々木ポスターのデザインとかコピーは好きですが、コンビニの現場でコミュニケーションしたほうが早い気がした。そこを考えず、素敵なポスターになっていることにちょっとだけ悩んだんですよ。

保持それはたしかにそうですね。

<NTTドコモ、NTTドコモ25周年『安室奈美恵 渋谷降臨』>

尾上NTTドコモ25周年『安室奈美恵 渋谷降臨』が好きでした。

菅野タイトルがヤバいよね。実はポスターのどこにも「降臨」って書いてないから、隠れた作品名として「渋谷降臨」と呼んでいたってことか。

尾上 25周年で、ドコモの携帯を使っている人たちに当時の雰囲気をグラフィックで思い出させる。実は工夫とかいらなくて、あれくらいのことをやれば一番効くんだろうなって。

大八木109のやつだよね。映像とセットではないよね?

尾上そうですね。映像は出してませんね。

菅野映像はCMでフィルム部門に出していますね。

大八木あれは若い恰好でメイクして、109に。

保持単貼りのポスター見たことあるんですけど、こっちのほうが全然いいですね。この場所にあることが、いい。

大八木すごいよね、たしかに。109とセットで。これガラケー持ってる?

東畑92年のガラケー。

言わなくても通じるよね。だからデザインだよね。よくできてる。懐かしいとか、あったあったとか、そういう話がなされるよね。

保持ここに貼るということを含めたデザイン。

大八木それはたしかにすごくいい。

菅野仕掛け的には。デザイン的にはどうでしたか?

保持単貼りのポスターとしてはいろんな年代の衣装を変えて展開するというのはあるんだけど、たぶんここの部分だけを出品しているのかと。

大八木そこは狙ってますよね。

菅野まあでも、タイミングと場所と企画と、統合的に見て広告として、ということを含めてどう評価するかでしたね。

ここ数年こういう交通広告で事件を起こすってあんまりなかったから。それこそ、00年代にいっぱいつくった…

菅野という嶋さんの発言が残ることは喜ぶでしょうね、企画した人は。

<日本放送協会『ねほりんぱほりん』>

八木『ねほりんぱほりん』はどうだったんでしょうか?

保持僕も気になってた。

八木PRで入ったんですけど、PRとしてはどうかなという話も出ていましたが、仕事として評価されてる人も多かった。番組のデザインとして見た時に、みんなもちょっと意見があったのかな、と…。

東畑新しいモザイクのデザイン。

保持そう、番組のデザインというか、モザイクのデザイン。アングラな人たちが出てくるので、デザインによるフィルターをかけた。それはすごい発明だなと。

番組フォーマットということ? テレビ業界のひとつのやり方として革新的だったから、それで評価するのもアリかなと思いましたよ。

橋田この見た目、デザインだから成立しているっていうシンプルな考え方はできるって思いましたけど。

菅野新しいモザイクの形。

大八木それはすごいことだと思います。モザイクよりもその人がしゃべってる感じもするし。デザインという切り口で、これまであまりこういう風なデザインはなかった。

橋田モザイクをデザインし直しているということ。

大八木書いてあるということは狙ってるということだから、それはすごい感じしますよね。

この手のを良しとすると、来年から“香川照之がカマキリの格好で出てるの最高でしょ”というのが出てくる。

大八木あの番組もおもしろいですよね。

そういうのもどんどん出してよ、と。

佐々木幅を広げられますね、来年のデザインカテゴリーに。メッセージとして、いろんなものがデザインになり得るよ、という。

保持個人的にはモザイクのリデザインという課題設定が非常にいいなと思う。だから香川さんのコスチュームがおもしろいおもしろくないというよりも。

保持それが番組企画から出て来たものなのか、そこがわからないですよね。

大八木番組ってそもそも制作スタッフがやってるんだとしたら、狙ってる。今までふたをしていたモノが、そのデザインをしたことで明るみに出たというのは、デザイン。

番組のオープニングとか出てきたらおもしろいよね、このカテゴリーに。そういう意味でも。

菅野来年(審査委員なのに応募しなかった)ユニちゃんが応募してくれることを願って(笑)。

中村カテゴリーの切れ目がいまだによくわからないんですけど、例えば新しいデザインの方法論というので、なんかの製品の新しいユーザーインターフェースみたいのもあり? たまたま来ていないだけで。ウェルカムだったらこれも全然いいと思う。

菅野ありだと思います。例えばこれだったら、番組では本当は映っちゃいけない人の話を根掘り葉掘り聞くっていう機能を持つインターフェースとしてこのデザインを施すということが、今までにない。いろんな事情を持った人の話を聞きたくなる心理を誘発するデザインという点で評価するのであれば褒めたほうがいいと思います。なんらかの課題があって、それに対してデザインの力でしっかり新しい力を獲得できていれば、応募して欲しい、と思います。

大八木なぜデザインでこれが上がっているのかと、今の会話を含めて、ちゃんと開示することによってこれからこの部門が成長していく時に、違う才能を増やすことになるし、いいと思う。

中村他の部門を知らないんですけど、クリエイティブイノベーション部門とかとかぶってもいいんですよね。

菅野かぶってもいいんですけど、ブランデッドとしてるので、常にクライアントだったり対象となる物があって、それに対して技術でということで。割とイノベーション部門は自主プロジェクトが多い印象があるので、そこでもしかして住み分けられるかな。

中村クライアントワークということですか?

菅野そうです。自主プロジェクトやアートプロジェクトというより、コミュニケーションワーク。しっかりクライアントがいて課題に対して行っているもの。なので、ブリーフがあってどういうソリューションを出してどういう結果を出したか、というフォーマットでもらっている。

中村うーむ、微妙なところですね。例えば僕もNHKの番組やってるけど、クライアントワークを純粋にやっているかというと割と一緒につくっている。どうなんだろう。こういうのに出したことないんですけど。結構中に入り込んでつくることが多いじゃないですか。

菅野そうですね。過去、小杉君が別名「モンスターK」として。自分をクライアントにポスターをつくったって話ありましたね。

小杉今回のこのブランデッドのデザインカテゴリーを多面的に広げるとすると、入ってもいいかなと思います。目的のためのデザインとしては機能しているので。逆に何でもありすぎてちょっと怖くなるというのもある。

大八木それもデザインなのかと。

菅野つまり番組づくりということ自体をクライアントワークとみなすかどうか。

中村内部事情がまったくわからないから…。

菅野さっきの「ミッツ・カールくん」は議論なくあっさりいったけど。

吉田たぶんデザインの部分がメインに評価されたからですかね。これはデザインももちろんですがそれ以上に企画の部分がおもしろいというのが大きいからなのかな。

菅野なるほど。そこはでも、部門の中のデザインカテゴリーなので。PRで褒めたというのもありますけど、デザインという角度でちゃんと機能を果たしているかというところで、モザイクの再定義として「あの人形のあのニュアンスが重い話をみんなに届けやすくしてくれているよね」という判断かどうか。デザインだけ切り出して考えるのが難しかった。

最後は多数決状態になってくるので。これだけ議論した上で、本当にピッタリのことは出なかったかもしれないけど、みんなはどう捉えたか。

多様を認めよう、ということだから。褒めて行こうよと思いました。

大八木でも狙いすませて応募していましたよね。

菅野ちゃんと新しいモザイクをデザインしました、と言っている。

さっきのPRも、日本PR協会のPRアワードだったら上位に上がらないやつがくる。PRパーソンから見ると違和感を感じるように、純正デザイナーが見ると「なんでこれ入るんだろう」というのが今回入った。でもそこが狙いで、こういう編成で審査委員を選んだわけだし。

菅野そうです。そういうデザインをやる審査されている方も入っていただいて。

小杉デザインといっても二つの評価軸が混在してる。「考え方」と「表現」。この場合、<モザイクをデザインする>という「考え方」を評価することになったかと。では、「表現」の評価とずればどうなのか。その混在がおもしろいと捉えるか、そこが大きいのかな。

菅野ぶっちゃけ、この議論をしていること自体、そしてこの議論を発表しようとしていること自体が大事とすら思いつつありました。当然「これは違う」と思う人絶対出てきますよね。完璧な答えがないけど、考えることが大事な気がする。

東畑アートディレクションとデザインの差ってどういうものなんでしょうか。

小杉審査の視点でいうと、「デザイン」は考え方。「アートディレクション」は、主にアウトプットの良し悪しを最重要視している。今の着ぐるみのデザインがあれが表現としても新しいのか、美しいのか、どうなのか、そこに踏み込むのか。そこの線引きが結構難しいなと思う。

中村僕の理解だと、アートディレクションは美術監督、デザインは設計みたいな。むしろデザインが一番広い使われ方されているというか。なんかそんなイメージありますよ。今の使われ方としては。

菅野部門を立ち上げるのにあたってヒアリングをしたら、そもそも「その他広告部門」なんだから、デザインカテゴリーじゃなくてアートディレクションカテゴリーとしたほうがいいんじゃないかって言った方もいたんです。

佐々木価値のデザインが最近重要視されてるじゃないですか。見た目のアートディレクションだけではない、意味性とか、新しい価値をつくろうというような。ACCはその他部門として広く取りたいなと思うと…。ただ、何が入るのか説明がいりますよね。贈賞式で菅野さんがレクチャーするとか、なぜこうなったのか、この部門ではどんなものを褒めたいのか何らかの方法で説明しないと。そうしないと、来年応募する人間が混乱する。

<北國新聞社、第102回高等学校相撲金沢大会「大会出場全72校相撲部応援ポスター」>

東畑例えば「相撲大会」のやつあるじゃないですか。ああいうのって、みんなどう思いましたか。

広告として機能するのかと最初思ったところはあった。見た人にどんな読後感をもたせるのか?って考えた。そしてそれが瞬間的に伝わるのか?

東畑グラフィックデザインとしての良さと、設計図がどうなんだろうなと思ったんです。評価がまあまあ高いことに、なんか理由があるんだろうなと。アートディレクションとデザインの中でどんな感じなんだろうと。

菅野並べてみると改めてヤバいと感じましたね。

東畑これ単体で、重ねて置いてあったから。並んでると「あっ」てなる。

八木これは、会場の設営で、駅貼りとかそういうんじゃない。

保持出場した高校たちの。

東畑並んで見たほうがわかる。塊でデザインされてるということでした。

菅野応援しに来た親とかびっくりしたでしょうね。ずいぶんとサイケデリックだなと。

橋田これは定着というか見た目素晴らしいと思うんだけど、これはブランデッドを意識したこの賞で評価するモノかということをみんなに聞いてみたかった。

上西デザインとかアートディレクションよりも、細部のクラフトとかグラフィックデザインをがんばった仕事に見えて、「ねほりんぱほりん」で言われていたモザイクのデザインの新しい定義みたいな話とは、レイヤーが違う。このポスターで本当に金沢大会は盛り上がったのかとか、競技人口が増えたのかとか、「カッコイイ」って高校生がファンになったのかが気になるんだけど、そのためにこれがつくられたのかはどうかな。どっちの軸で点数を付けていくべきなのかは、デザインカテゴリーの定義によりました。ブランデッドというところで、ちゃんと商品や企業のブランディングにデザインが寄与して解決しているかと考えると、そこまで評価は高くはないのかな。でもグラフィックデザインはすごくがんばってるよね、っていう感じ。

八木そういうのは、クラフト賞で褒めてあげるのもいいのかもしれないと思いました。

橋田なんとなくそっちの考え方にしたほうがよさそう。ADCとかJAGDAとか別の賞がある中で、今回はそこでは拾われてなかったものとか、可能性を広げられる物にも目を向けることを考えました。

小杉グラフィック1枚でも、ブランドとしての見え方を変えるということにはチャレンジしてるとは思うんですけど、単純にブランドとしての意思が足りないのかな。昔、佐野研二郎さんがつくった「柔道」を「JUDO」に英語にしてアイコン化したというのは、ロゴ1つでブランドの意思を感じると思うんですよ。これはちょっとクラフトに行きすぎて、デザインのダイナミズムみたいのは足りないのかなと思いました。

どこに何を持っていこうとしているのか。

八木ラッピングペーパー的な感じになっちゃった。

東畑塊で見た時の感じはわかった。審査会場では単体だったからわかんなかったけど。

東畑でもあれ可哀そうですよね。審査する時並んでないと。連貼りじゃないと。

菅野そうですよね。72校あるんで、

東畑あれは72校並べてこそのデザインですね。

<AIGジャパン、AIG CSR活動『PRIDE JERSEY』>

菅野『PRIDE JERSEY』はPRでも高く評価されましたけど、デザイン部門では、プロダクトとしての応募ですよね。引っ張ると虹になるという。

大八木デザインのほうが褒めやすいような気がしました。ジャージをつくって。

菅野これって実際に試合で使われたわけではないんですよね。

大八木CSR活動ですね。

橋田試合では使われてないと思います。僕が目撃した中では、代々木公園とかでやってるレインボーパレードで展示されたり着られていました。

菅野有名人が着て、パレードした。オールブラックスのユニフォームじゃないんだ。

保持イベントの中で使われたんですね。

佐々木実際の試合に着たら暑そう。

大八木CSRのイベントというか、パレード。

保持試合で使われたんだと思い込んじゃってて、すごいいいと思ったんですよね。引っ張られる競技じゃないですか。だから自然と(虹が)出てくるというのはすごくいいなって。

大八木たしかにパレード中に引っ張られない。

(笑)

菅野サイズが小さい場合全部レインボーになる。

大八木その日はそのゲームで着たのかなって最初に思ったことですよね。

佐々木親善マッチとかで着ればよかったのにな。

大八木試合で引っ張られている様子があったらすごく美しい。

保持それはすばらしいなって思ったんです。勝手に思い込んでいただけだった。

大八木それを狙ったけどそこまで行きつかなかったということなのかな。

上西カンヌの時は大人気でみんなすごい引っ張ったんですけど、あれ?意外と色出なくない?って。見えなくない…?みたいな。

保持これ以上引っ張ったら破れるかもしれないと思ってやらなかったんだけど、試合中ならガーンと引くからと思って脳内補完していた。けど、そもそもそうじゃなかった。

菅野この画像目指して引っ張ると、けっこう頑張っても出ない。

大八木とはいえ、見えたよね。

佐々木出てはいた。試合で使っていないことをどう判断するかでした。

<ラフォーレ原宿『LAFORET HARAJUKU GRAND BAZAR 2017 SUMMER』>

橋田「ラフォーレ」。僕は好きでした!

菅野急に強い感情表明が。

(笑)

橋田若者の気持ちに刺さりそうなのと、コピーを打ち込んでいるデザインがグッときた。

大八木勢いあるね。これは思いつかないな。

佐々木コピーライター的なスキル。これコピーなのかよって思った人が何人かいるとは思いますけど。

(笑)

大八木「ヘーホンホヘホハイ」にも通ずるものが。言葉そのものでシズルがデザインできてるのは結構すごい。なかなか日本人的感覚ではできないすごい色使い。

橋田ブラウザをああいう風に表現する。

大八木「バーゲン!」って大貫さんとかからの時代からやり尽くされてる中で、ずっとラフォーレでがんばってる中で、すごく新鮮だった。

上西たしかすごい再生回数だった。

大八木このフラッグとチラシと。

菅野これはどういうロジックですかね。

上西勢いが余って打ち間違えたっていう。

橋田ブラウザも閉じかけて。

保持めちゃくちゃアイデアですよ。ここに普通につづりで「ラフォーレ」って入ってたら全然成立しない、ガッカリしちゃう感じ。化けてるっていうか。

菅野この打ち間違い、日本人だったらぎり読めるっていうのがすごい。

大八木動画もいいんですよね。

尾上僕もすごい好きです。今日び、このポップアップのエラーっぽいのにしたのか。

保持ブラウザークラッシャー世代がターゲットじゃないだろっていう感じがするよね。

佐々木ちょっと古い人がつくってる気配がします。今ローマ字入力じゃねえだろ、若者。

たしかに。たしかに。
大八木「うtちィわ」とかおもしろいですよね。

中村このサントリー「山崎蒸留所」の評価理由を教えてもらってもいいですか。

これデジタル・エクスペリエンスでも入っていたやつですね。

中村とてもクオリティが高いけれど、何かが特別新しいという感じでもないなと思ったんです。映像とか写真とかレイアウトがしっかり洗練されているけど、アートディレクションとしてそんなに上かなと思ったんです。

橋田順位は置いておいて、僕はウイスキーと山崎というブランドの定着感としてすごくいいなと感じました。この定着がすごくブランドのためになっている。山崎らしくて、ウイスキーらしいなと思いました。

中村その辺は異論無い感じなんですが、でもちょっと聞いておきたい。既存のウイスキーらしいイメージを大切にしてしっかりやってるというのは解るんです。

東畑まずデザインの中でありつつも、エクスペリエンスというほうでいうとすごい。工場見学に行けない人にとって、行った以上に「ミクロの世界で発酵」を見るのは体験としておもしろい。時間軸を映像で感じられるように出来ている。オウンドメディアの中でああいう体験って、工場見学の新しい体験として面白いなと。

中村デジタル・エクスペリエンスとして評価するのは異論無いんですけど。例えばトヨタ「GR」とか「輝く人の、STAR FRYER」とか、それぞれ車や飛行機のイメージを微妙に更新しようという意図が見える。山崎は割と、皆が了解済みのこれまでのウイスキーのイメージを割とそのまま踏襲しているような気がした。

大八木価値を変えたかということについて言うと、今の飛行機や自動車に比べてそこの部分はちょっとと思うんですけど。こういった映像表現で、とくにスマホがこれだけよく動いているということに驚きました。そういう意味では最高のカタログだなあと思ったりして。
デザインとして色が付くのはいいと思いましたが、どれくらいになるかはみんなの意見が聞きたいなと思いました。
あと映像と音が結構…ウイスキーって時を重ねておいしくなるもので、それに水がとても大事だと。僕はウイスキー好きだからわかるし、好きな人がちゃんとグッと来る表現にはなってると思うんです。一方で本当に好きな人からすると、その物語がいるのかと。「時は流れない。それは積み重なる」というコピーを紐解いた、というところが旅になっててそれがエクスペリエンスなんですけど、デザインかというとどうでしょう。

上西クラフトのクオリティがすごいなというは純粋に感じる。

大八木これだけ高いもので、世界で売り切れになっているから、そのクオリティ感に耐えるものをつくるって難しいし、そういう意味で見合うデザイン。

<パートナーエージェント『ドロンジョとブラック・ジャック』>

菅野パートナーエージェント『ドロンジョとブラック・ジャック』は評価が激しく二分しました。僕はかなり好きだったんですが、デザインとして評価すべきなのか、みんなの評価を聞いてみたいと思いました。

デザインではないのでは、と思ってる人がいたんじゃないのかなあ。実際交通広告として車内吊りで掲出しているの見たら、効きそうだなって思った。これも広告としてエフェクティブネスを褒めるのか、デザインを褒めるのかってところで悩んだ人がいるんじゃないかな。

菅野少なくとも他のカテゴリーに移せば何とかなる感じではなかった。

(笑)

佐々木プリントアドとしての機能ですよね。

コピーも含めて広告として

保持この構図はすごい好きです。背中なめで。コピーワークも含めてそっちが好きでした。

大八木これ系の広告って直接的なものばかりの中で、ここまで考えさせるものっていうのは無かったなぁと。そういう意味では僕は評価の対象なんじゃないかなと思いました。

中村よく見る有名な漫画キャラを活用しました的な広告に比べて、この広告でのキャラクターの扱い方が、これまでになく大人っぽいのがとても印象的でした。初対面の大人同士の探り合い、みたいな微妙な場面でよくこの二人を持ってきたな、というか。

大八木ブラック・ジャック若いんだな。33歳なんだ。

(笑)

菅野そっちにショック。

こういう作品もデザインとして評価するなら、日経電子にバーンとか出してきたら通ったってことだよね。

東畑ムービー込みなんですよね。

菅野グラフィックが応募されてましたね。

中村ドロンジョってこんなきれいだっけ。

大八木ちょっと盛ってます?婚活中だから若干盛ってるかもしんない。

保持NPO職員みたいになってる。

菅野ブラック・ジャックは正確に言うと医師じゃないんじゃないか。

一同(笑)無免許医だから!

小杉これってこのために描き直したりしてるんですか。

保持あんな構図ないんじゃないですかね。描いてるんだよ。

小杉最終的な定着で、違う漫画家の画を同レイヤーに持っていくって意外と大変なんですよ。線の太さとか。それを同じ世界観に収めているというのはすごい。

一同なるほど。いいこと言う。

保持(結婚相談サービスの)ユーザーは真剣な悩みを持ってるから、あんまり茶化すのは絶対にだめですよね。キャラクターを持ち込みながら大人っぽいという、すごくいいサービスだなと思わせるところにたどり着いているのがいい。

菅野これは評価が高かった。

<キリンビール『グランドキリン』>

中村これ、こういうラベルのビールなんですか。あんまり見たことないけど。

ああいう絵が、瓶にそのまま貼ってますよね。

これはマーケティング戦略。つまり、ビール離れの若者でもクラフトビールは飲むからその市場に打って出るということだよね。で、その世界観をデザインで体現している。

上西キリンて代官山にクラフトビールのお店出して、すごいちゃんとやってるんですよ。

ここにチャンスがあると思って攻めてるわけですよね。実際、このパッケージはターゲットをとらえたんでしょうか?

佐々木最初グランドキリンってもっとビールビールしてましたよね。

大八木だからものすごい変えましたよね。

佐々木それを狙いで変えて、どうだったのか。

東畑リザルトは。

中村これ見たことないんだけど、スーパーで売ってる?

大八木ナチュラルローソンに行くとカエルや猫やいっぱいクラフト系のビールがあって、そこに並んでいてほしいなと思うのに、たしかに店頭で見たことないな。それってどうなんだろう。デザインとしては楽しいと思うけど、これデザイナー的観点では効いてるのか。

その世代の人たちに。

佐々木2012年はセブンイレブンでしか買えなかったが、今ではどこでも買えるらしいですよ、あんまり見ないけど。ビールのパッケージやラベルって、いろんな冒険がやられていて、いろんなことされているんですけど、その中で「すげえ」っていう感じには正直思わなかった。

保持クラフトビールって特に、すっごくおもしろいのがいっぱいありますもんね。特に海外行くと。

大八木日本もすごい増えてきているじゃないですか。

佐々木新しいものをつくったんじゃなくて、近づいたと。

大きくイメージを変えて効果がどうだったか知りたかったね。

菅野そんな感じですよね。

<神戸新聞社『神戸新聞創刊百二十周年企画 SINCE1995』>

審査の時、15段一枚づつ見たじゃないですか。でもこれ実際は一冊にまとめられていたんですよね。新聞として配られたんですよね。

大八木別冊みたいな感じですかね。

保持それが知りたかったですね。どうだったかによって見え方が違う。

佐々木ロゴも何もね。神戸新聞の広告なのかなんなのかよくわかんない。

保持別冊にこれだけ。真ん中に30段になっていて、めくるごとに。

橋田そして配布した?

それも知りたかったですよね。どう使われようとデザインとしてはたしかに強い。でもどう使われるかもデザインじゃない。

菅野これって…応募時にそこまで記載されてなかったのか。同梱しましたみたいなこととか。

大八木黒のボリュームがすごくいいと思う。それに積み重ねたレイヤーを、アイデアをこれだけ綺麗に見せることにとてもグッときました。

佐々木折り込みで別冊って書いてありました。

保持新聞と同梱というか、折り込みで配達されたんですよね。

<トヨタ自動車、GR『Born From Motorsports篇』>

菅野これはもう完全にクラフトが素晴らしかった。素敵なデザインですよね。

大八木ここまで潔い広告最近見てない感じがします。

菅野これはどういうところに貼られたんですかね。そういう問題じゃない?

大八木会場とかじゃないですか。

保持ああレースとかの。まあでもターゲットとしても近い。

東畑ムービーもありましたっけ。

保持ありましたね。

菅野そうか、映像も込みなのか。

菅野映像の「GR」って発音がすごい強烈ですね。

嶋 ガズーってもともと「画像」なんですよ。豊田社長とガズーを率いる友山副社長がかつて画像ビジネスに挑んだところから名付けられた。

菅野これは、めちゃんこかっこいいんですけど、どういう課題に対してどうデザインしたってことなんでしょうか?

モータースポーツで獲得した技術を一般車に移植していきますっていう意志を表明したんだと思います。

大八木トヨタ車って大衆車という思い込みがあるけど、「レーシングスピリットをもっているんだよ」って言いたかったってことですよね。

<スターフライヤー『Star Chorus 〜飛行音を軽減する新体験プログラム〜』>

上西「スターフライヤー」の仕事はすごく大変だったんじゃないかな、ポスターから会議室とかまでいろいろ全部統一でやってるのはかなりの大仕事。しかもかっこいい。ブランデッド・コミュニケーション部門のデザインカテゴリーとして、ブランディングをしっかりやっている仕事をちゃんと評価したかった。

「スターフライヤー」って長いよね。ぶれないところがすごいよね。

佐々木ブランドはしっかり生きてますよね。

<「行くぜ、東北。」>

菅野あとは…「行くぜ、東北。」も2つありました。これも長い間続けていますね。震災後からずっとやってる。でもちょっと毛色の違う2つ。

別ですね。1つが実写で。ひとつはイラスト。

菅野これはさすがに一緒にするわけにいかなかった。それぞれ評価すべきものでした。特に写真のほうはちゃんと汽車がヒーローになってて、シズルもある。

上西これちゃんと駅に貼ってあった。

保持ちゃんと貼ってあったよね。それがすごい。そうじゃないの多いから。

上西審査会場で見て、出力じゃなくてちゃんと製版されてるな~って。あと、お母さんも知ってる(笑)。

佐々木他の会社が駅に広告出稿してくれてないのかもですよ。

保持あ、そういうこと。スペースを自社広告で埋めてる。でも素敵ですよね。

大八木続いていて新鮮なのがすごいな。

菅野そういう意味ではパートナーエージェントのもめっちゃ見ましたけどね。だから、割と広告として機能してたから、よく見たというのも、わかりますね。

保持続いたということは、すごくサスティナブルに、クライアントさんもいいなと思っているということの一つの証なのかな。