デザイン部門審査評

総務大臣賞/ACCグランプリ

作品名
キヤスク 着たい服を着る日常を、
すべての人に。
作品概要

キヤスクは、身体に不自由を持つ人が抱える「着たい服でなく、身体の事情に合わせた着やすい服を選ばざるを得ない」という悩みを解決するために生まれた、世界初の服のお直しのオンラインサービス。自身の子が身体に障害があったために、必要に迫られ身につけた、特別な服のお直し技術を持つママたちを組織して事業化しました。

審査評

ファッションという巨大産業に、リペア文化が広がってほしい。リペアは手仕事だからこそ、仕事がまとめて集まる場がほしい。リペアはもっと自由に多様な選択肢に開かれてほしい。大量生産時代のカウンターとして、リペアはファッションの希望になってほしい。

キヤスクは、こうしたファッションの未来に重要な種を備えている。彼らの規模はまだ小さいし、サービスはもっと改良できそうだ。だからこそ審査委員一同は、現在の彼らだけでなく、将来への期待を込めて、キヤスクをグランプリに選んだ。キヤスクの成長を一つの旗として応援したい。
(太刀川 英輔)

ACCゴールド

作品名
アルトタスカル
作品概要

あると助かるこども服「アルトタスカル」。前・後・裏・表、どこからでも着れる「ぜんぶおもて」Tシャツ。再帰性反射材をつかい夜道でも光りつつ、普段着もしやすいデザインにした「ひかるふく」。高額でバリエーションの少ない障害児向けの服を⺠主化した「おしゃれバリアフリー」など、育児に役立つ服を展開。

審査評

シンプルなことばやグラフィックで、その製品価値を強固に訴求するクリエイティブの秀逸さはもちろんではありますが、この製品をうみ出した皆さんの優しさや温かさがじんわりとにじみ出てくるような素敵なご提案でした。

医療・介護・福祉の現場では、一般のアパレル品などの充実度合いと比べて、著しく選択肢が限られてしまうことも少なくありません。この作品を見た様々な立場の人々が、社会の至る場面で「あるとたすかる」を発見し、新たな「アルトタスカル」がされるような循環が実現されたら、と更に期待が膨らんでしまいました。

チームの皆さんに心よりお祝い申し上げます。これからも頑張ってください!!!
(武部 貴則)

ACCゴールド

作品名
マキシマム ザ ホルモン
腹ペコえこひいき店プロジェクト
作品概要

たった1枚のクーポンでファンが経営する個人商店をバンドのプロジェクトの一員に。バンド×加盟店×ファンのWin-Win-Winの三角関係を作り出した、まったく新しいファンマーケティングデザイン!

審査評

マキシマム ザ ホルモンは、自らの魅力とファンが求めるものを的確に把握している。でなければここまで的を射た企画は生まれない。彼らがファンクラブを作らず、サブスクリプションを解禁しない姿勢を貫いているのは、それではファンを満足させられないと知っているからだろう。今回の企画からは、いちバンドによる創造的可能性、ポジティブなアイデアによる音楽を越えたムーブメントの発生が感じられた。余談だが、私自身はクーポンを隠し持つ「腹ペコ」故に辛口に審査をしたが、他の審査員の圧倒的高評価によりGOLDに決定した。
(小玉 文)

ACCゴールド

作品名
ミカン下北
作品概要

京王電鉄の下北沢駅前再開発を“よくある商業施設“に終わらせず、「東京都実験区下北沢」というコンセプトで街を再定義し、それを体現するための中枢施設として位置づけた力強いブランド「ミカン下北」を誕生させた。多様な人や文化が交差し常に変化し続ける”未完”の街・下北沢をアップデートする強力なエネルギーとなり、内外に多くの共感とアクションを生み、多くの注目と来街者を集めた。

審査評

文化に関わる多くの人の思い出の街、下北沢。その再開発プロジェクトが「ミカン」だ。このブランディングは、下北沢を開発で完成させようとせず、地域の多様な才能とともに、動的な「未完」の発達と継続を強く宣言する。昔から下北沢の魅力は洗練や完成度ではなく、猥雑さから可能性が生まれ続けるダイナミズムだった。そんな動きのある文化は通常、再開発によって簡単に失われる。けれどもミカンは逆に、都市をハックする姿勢で動的な街の魅力を高めた。このプロジェクトの10年先に、未完の下北沢がどう発達しているのかが楽しみだ。
(太刀川 英輔)

ACC シルバー

作品名
石のかおをつくろう
作品概要

1955年から人口減少が続き、観光戦略を模索していた新潟県糸魚川市。石の種類が日本一であるという特徴を魅力的に発信するために、“石のかお”をつくる市⺠参加型のアート活動を実施。誰でも自由な発想で個性豊かな“石のかお”を生み出せるデザインフォーマットを開発し、SNSで全国から誰でも作品を公開できる仕組みに。様々な“石のかお”が公開されるたびに、糸魚川市が“石のまち”として豊かに成⻑する市⺠参加型のシティブランディングが実現した。

審査評

まちの魅力はまちそれぞれである。行政は、古くから支えてきた産業や生活文化など自分たちの暮らすまちの顔をいつも探している。自分たちの顔が見当たらないと嘆く話も耳にする。では、本当に何もないのだろうか? 糸魚川市は自然環境に目をつけて、風景が美しい、美味しいものがあるというところを越えて、足元にある石に着目し、そこから始まるコミュニケーションに挑戦している。一瞬で目を引くデザインにも評価が集まったが、何よりも誰でも参加出来るプログラムとして、発見しつくるプロセスをみんなでやってみることにワクワクした。きっと関わる人たちも、このまちは自分たちごととして、考えて良いんだなということを自然と背中を押すような仕組みのデザインにこそ、これからの地方自治体が向かう姿のヒントがあるのではないでしょうか。
(原田 祐馬)

ACC シルバー

作品名
静岡市プラモデル化計画
作品概要

「静岡市プラモデル化計画」は、静岡の町の景色をプラモデルの姿へと変えていくシティリノベーションプロジェクト。生産シェア8割を超える静岡市のプラモデル産業を活用して町の魅力をアピールするべく、ポストや公衆電話などを1/1スケールにした”プラモニュメント”を次々と町へ誕生させ、町に根付く伝統産業を新たな観光資産へとリデザインした。

審査評

業種や世代を超えて、静岡市で暮らす人びとが、プラモデルという街の魅力に誇りを持っている気持ちが伝わってくる。地域がもつ個性への自信に溢れた、まっすぐでパワフルな取り組み。自分達が自信を持って誇れるものを見つけ、それを極端な形でやり抜くこと。人の心を動かすことの一つの定石は、「極端に」やり抜くことだ。どんなプロジェクトも、どこかでブレーキを踏んで丸くなってしまうことが多い中、このプロジェクトに勇気づけられた、「極端な」地域創生プロジェクトが各地に広がり、それぞれの地域を盛り上げていくことを期待したい。
(山崎 晴太郎)

ACC シルバー

作品名
環境にも子どもの身体にも
負荷をかけないランドセル
作品概要

環境にも子どもの身体にも負荷をかけないスクールバッグの提案です。
循環型リサイクルポリエステル生地を採用し環境への配慮と、
布で作ることで革製品より軽くなり子どもの身体への負担を軽減しています。
フラップが取り外せ、ランドセルとしてだけでなくリュックとしても使えるなど機能性とデザイン性両方を追求しました。

審査評

ランドセルはなぜ必要なのか?という疑問もあると思いますが、この「スクールバッグ」は次なる変化への第一歩に踏み出した商品だと思います。形や体への負担などを軽減した機能性と設計、素材など大幅に見直したことは簡単なことではなかったと思います。前のフラップを取ることで学校だけでなく私生活での応用も見越せるデザインにもなり、長期的に使える商品にもなったこと、動物革ではなく、再生リサイクル布を使い環境配慮も見据えたロングライフ商品となっているところも高く評価すべき点です。
(ライラ カセム)

ACC ブロンズ

作品名
Hi Toilet
作品概要

私たちは、手を使わずに声だけで操作できるトイレの体験をデザインした。国内で暮らす人々はもちろん、海外からの訪日客の方、ハンディキャップをお持ちの方、全ての人が対象者であるため、体験としても物理的にも耐久性のある設計が求められた。

審査評

新たな公衆衛生の実験として、高く評価された作品でした。声によるコントロールにフォーカスしたミニマルな空間デザインや、テクノロジーに抵抗感がある人にも配慮した優しい体験デザインなど、トータルで非常に丁寧に設計されていると感じました。またボイスだけでコントロールできる空間・体験のR&Dとしても面白く、トイレ以外でも展開・応用できる未来の可能性なども含めて納得の受賞なのではないでしょうか。今回の一施策だけでおしまいにするのではなく、ぜひ継続して発展していってもらえたらと思います。
(川村 真司)

ACC ブロンズ

作品名
みんなで!どう解く?
作品概要

世界初!子供達と作ったハッピーセットの絵本「みんなで!どう解く?」。答えのない道徳の問題と解答が掲載され、子供自身が考えたいテーマを元に日本中から1年間集めた。本を元にした道徳授業は1000以上の学校で実施。マクドナルド、ポプラ社、教育委員会、クリエイターが共創したコンソーシアム型社会課題解決業務。

審査評

自宅に溜まっていくハッピーセットのおもちゃに悩まされてきたお父さんやお母さん、多いのではないでしょうか。このマクドナルドの新たな取り組みは、おもちゃに代わる選択肢の一つとしてポプラ社監修のもと「答えのない道徳の問題」をテーマに、目まぐるしく移り変わる現代社会の価値観に大人と子どもが一緒に向き合える絵本を制作、提供するというもの。更にこの絵本データを学校で使える教材としても無料配布しており、21年12月現在全国200校で採用されてきたという。大企業のこういった取り組みが与える社会的インパクトはもちろん、その遠心力によって多くの企業の社会活動に様々な変革が起こっていくことを期待しています。
(ムラカミ カイエ)