総務大臣賞/ACCグランプリ

- 作品名
- VISIONGRAM
- 作品概要
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VISIONGRAMは、視覚障がい者それぞれの⾒え⽅を再現する、世界初のインクルーシブツール。⾔葉で伝えることが難しい、視覚障がいの視界を可視化する独⾃のデザインシステムを開発。検査データを⼊⼒すると、視界をドットで表現するビジュアルフィルターを⽣成し、スマートフォンのカメラを通じて体験・共有可能に。
- 審査評
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「見え方」という、これまで共有不可能だった個人の感覚。その見えない壁に、当事者に寄り添ったテクノロジーとコミュニケーションの力で光を当てた点が高く評価されました。
人それぞれの視覚を「VISIONGRAM」として定義・可視化し、他者が体験できる形に変換したアイデアは秀逸でした。これまで想像するしかなかった他者の世界をリアルに感じ、相互に優しさ(Generosity)を発揮するための新たな道筋を提示しました。
生活に最も重要な感覚の一つである視覚という側面から、多様な個の健康のあり方を理解するための大きな一歩であり、今後のさらなる展開にも期待が膨らみます。
(武部 貴則)
実はこの作品、オンライン審査では、社会実装を目的としないプロジェクトなのかなと感じて、あまり評価してませんでした。でも最終審査の際に、他の審査委員のみなさんからの意見で評価を変えました。どこまで効果あるんだろうという思いは拭えないのですが、当事者でも認識が難しい「見え方の違い」にアプローチする姿勢を評価させていただきました。問題は当事者ではなく、社会の側にあるという設定で、インターフェースをなめらかにするプロジェクトは応援したいです。今回のグランプリ受賞を勢いに変えて、社会実装してもらえることを期待します!
(朴 正義)
ACC ゴールド

- 作品名
- 新しい大会へ。すべての人に、スポーツのチカラを。
- 作品概要
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第78回国民スポーツ大会・第23回全国障害者スポーツ大会
『SAGA2024国スポ・全障スポ
ー新しい大会へ。すべての人に、スポーツのチカラを。ー』
開催期間:国スポ 2024年10月 5日〜15日
全障スポ 2024年10月26日〜28日
(一部会期前競技有)
開催場所:佐賀県内全域(一部県外)
開催競技数:95競技
参加者数:延べ約59万人
その他配信動画アクセス数1,000万回以上
- 審査評
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今回の審査において、最終審査で最も評価が上がったのが「SAGA2024国スポ・全障スポ」でした。これまでの「体育」から「スポーツ」への変革をソーシャル・デザインによって、スポーツをする人だけでなく、観る人、運営する人にも新たな体験をもたらせた。今回の佐賀だけでなく、今後の日本のスポーツ文化に大きな変化を実現した取り組みだと、審査委員一同感動致しました。
(黒田 英邦)
ACC シルバー

- 作品名
- 映画「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」
- 作品概要
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映画「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」は、劇場用映画として日本〝初〟となるインタラクティブ映画。
観客はスマートフォン専用アプリを使用し、劇中で繰り広げられるラップバトルに投票。
観客ひとりひとりの選択により上映回ごとにストーリー展開や結末が変わり、その全上映パターンは48通り、エンディングは7通り。
日本映画史上誰も踏み込めなかった映画館での投票参加型体験を可能にした新しいエンタメ作品として、その公開規模は85館でのスタートでありながら、興行収入18.5億、動員数75万人突破を果たす。
- 審査評
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劇場公開された日本初の観客投票型ストーリー分岐のインタラクティブ映画として、ロングラン興行と高い動員を達成した作品。1960年代から世界で実験的試みはあったものの、2025年2月全国85スクリーンで公開後、順次館数を拡大した本作は、観客がアプリを通じ物語に参加し、何度も劇場に足を運んで推しチームを応援する―ライブさながらの“生の疑似現実”を実現した。ラップバトルを軸に音楽・ライブ・舞台・漫画・ゲーム・TV・映画を横断する自然なメディアミックスも背景に、実験性と興行性を両立させた次世代シネマの新フォーマットを提示した。
(戸村 朝子)
ACC シルバー

- 作品名
- 涙目シール
- 作品概要
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値引きシールに“たすけてください”と“涙目のおむすび”のイラストを追加し、感情に訴えかけるデザインに刷新。
消費者の「助けたい」という貢献意欲を引き出すことに成功し、実証実験では購入率が5ポイントUP。これを全国展開した場合、年間約3,000トンの食品ロス削減の効果に。この結果を受けて、25年3月より順次全国展開。
ミニマムなデザイン変更によって、食品ロス削減と売上の増加を同時に達成。
- 審査評
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おにぎりが目をウルウルさせて「たすけてください」と訴えるシール――ただそれだけなのに、食品ロス削減の解決策として鮮やかで効果的。実際に大きな結果も出てる。私も毎日コンビニで目にしてる。
絵もほとんど絵文字。いわゆるグラフィックデザイン的な表現も、素敵なキャッチコピーもない。でも3歳の子から中学生、大人、80代のおじいさんまで、皆に一瞬で伝わる。SNSでは「このシールずるいw」と褒められ、海外観光客にも喜ばれそうだ。
もしかすると、今後は日本のコンビニの定番の風景になるかもしれない。大好きな施策です。
(佐藤 ねじ)
ACC ブロンズ

- 作品名
- Smart Eye Camera
- 作品概要
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すべての医師を、眼科医に。Smart Eye Camera
スマートアイカメラはスマホだけで眼科検診を可能にするプロダクト。
現在、世界の失明人口は4400万人。その原因の半分以上は眼科医療へアクセスできないためだと言われている。我々が着目したのは、患者のそばには眼科医はいなくても医療従事者はいること。
もし彼らが眼科医のように眼科検診ができるようになれたら?世界の失明を防ぐことができるのではないか。そんな発想からスマートアイカメラは開発された。
追求したのは新興国でも機能するシンプルなデザインだ。3Dプリンタの制作で価格を安価に抑えたプロダクトデザイン。スキルを必要としないチュートリアル動画などの体験デザイン。これらの結果、世界60の国と地域で導入。10万人の健診を実施。イノベーションとデザインの力で、眼科医の目を世界中に広げている。
- 審査評
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Smart Eye Cameraは、世界96%が所持する携帯電話にアタッチメントする装置を通して、医療設備や診察状況が限られている現場で本能的に使える診断機材を提供している。世界保険機関WHOの調査によると世界の視覚障害を持つ人口の90%がアフリカ諸国、東南・南アジアなどの発展途上国にいるとされている。これらの目の病や炎症の多くは事前に防げるもので、初期診療が重要となる。これは海外だけでなく、日本の過疎地域においても今後重要な課題である。本来は高額な診断機材が必要になる場所で大いに活用されることで、Smart Eye Cameraが今後世界の失明を半分にする未来はそう遠くないことを期待する。
(ライラ・カセム)
ACC ブロンズ

- 作品名
- HONYAL
- 作品概要
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HONYALは総合書店取次「トーハン」が提供する書籍少額取次サービスです。
小型書店の開業、他業種店舗(飲食店・ヘアサロン等)での書籍販売、公共施設や一般企業などでも本屋を開業できるパッケージを開発。
トーハン独自の配送網を活かし、流通フローを簡略化することで全国各地に人と本とのタッチポイントを増やすことを目指しています。
- 審査評
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町の本屋が減り、あるいは均質化が進む中で、本と町のあいだに新しい関係を育てる試み、HONYAL。流通の仕組みをリデザインし、本にスモール・ビジネスの自己表現手段という新しい価値をも与えています。大手出版取次会社であるトーハンが取り組んでいることにも大きな意義を感じます。町のあらゆる場所で本が売られている、そんな未来が実現するまで、挑戦を続けてください。
(米澤 香子)
ACC ブロンズ

- 作品名
- LOST CORNER AR LIVE IN HARAKADO
- 作品概要
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米津玄師の最新アルバム「LOST CORNER」のリリースを記念し、東京・原宿の最新スポット「ハラカド」と「神宮交差点」を舞台に、地上28メートルから体験するARライブを実施。8月15日〜25日の10日間、ハラカド屋上でリリースイベントを実施し、その目玉コンテンツとして、ハラカド屋上から最新のiPadで体験するARライブを提供。ラフォーレやオモカドといった周辺広告媒体もジャックし、東京のカルチャーの交差点である神宮交差点が「LOST CORNER」となった。
- 審査評
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いまがすでにAGI前夜だとか、クルマはフル電動(BEV)まで一気に行くのかPHEVを挟むのか、といった問いと同様、リアルとバーチャルが融合したARの未来もまた、確実な答えを誰ももっていない。だからこそ、日本が誇るクリエイターと技術による圧倒的なエンターテインメントが生み出した、掛け値無しの熱狂こそが、その未来を確実に手繰り寄せていく。
(松島 倫明)
ACC ブロンズ

- 作品名
- 日本初うんちのドネーションプラットフォーム『ちょうむすび』開発・社会実装プロジェクト
- 作品概要
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腸内細菌を活用して難病に挑む新たな医療のため、日本初の「うんちのドネーション」の仕組みを実装。ドナー認定の過程で行われる腸内細菌検査を、自分の腸を知る健康体験へ転換。
「献便」への心理的ハードルを、アプリと献便施設を一体としたUX設計で払拭した。高度な先進医療を、生活者の自然な関心と行動を引き出すインターフェースへ翻訳し、誰もが参加しやすい"健康のシェア体験” として社会に提案した。
- 審査評
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「うんちをドネーションする」という、一見すると生理的嫌悪感さえ感じさせかねない試みを、ここまでヘルシーかつインクルーシブな印象に仕上げているのは、ネーミング・グラフィック・空間・UI/UXを包括したデザインの力に他ならない。恐らく複数のクリエイターが関わっている中で、前代未聞のサービスでありながら、一貫したクリエイティブディレクションを実現していること、メディカルデザインの新境地を広げていることが高く評価された。サービスそのものはまだPoC段階ということだが、今後の事業拡大に大きく期待したい。
(龍崎 翔子)
デザイン・クラフト

- 作品名
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- 作品概要
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これはニッカウヰスキーのリ・ブランディングプロジェクトです。商品ごとにセールス用のコミュニケーションを行ってきたニッカには、グローバル市場で一貫したブランドの認知、プレミアムブランドへの舵切りが急務でした。表参道のハイブランドエリアでのフラッグシップバー(ブランド体験の場)オープンを皮切りに、広告、ブランドアセットの再構築、ファン醸成の戦略など、インナーからアウターからブランドの価値向上をデザインしました。
- 審査評
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最初、すべての商品のラベルを無くして販売するというアイデアなのか!?なんと美しい!!!と興奮して見ていたのですが、どうやらグローバルブランドキャンペーンのための表現だと聞き、少しガッカリしてしまいました。多分他の審査委員も同じで、それ故に、大変美しい表現にもかかわらず受賞を逃してしまったのではないかと思います。しかし、前述の通りデザインのクラフトという意味では、最上級とも呼べるくらい微に入り細に入り美しく作られており、ほぼ満場一致で初のデザインクラフト賞の受賞となりました。No labelという今の世相に一石を投じるようなメッセージと、それを言葉がなくても伝わるような美しいビジュアルで構成された素晴らしい広告キャンペーンだと思います。どうしてもソーシャルインパクトなども考慮した評価になりやすいデザイン部門ですが、こういった広告表現も、きちんと評価できるような部門であって欲しいなと思います。
(川村 真司)
本エントリーは、元来象徴的なウィスキーラベルをあえて排することで、酒そのものの質感や琥珀色という本質を浮かび上がらせ、見る者の想像を引き出す。商品名だけでなく人物描写もシルエット化する表現によって、多様性や誰もが自分らしく楽しめる可能性を内包させている点に、高いメッセージ性と革新性が感じられた。伝統とモダンの接点で社会との新たな対話を創出し、ブランドと社会を再接続し直す挑戦として、大きな示唆を与えるプロジェクトである。
(ムラカミ カイエ)

