デザイン部門審査評

総務大臣賞/ACCグランプリ

作品名
MANGALOGUE(マンガローグ):火の鳥
作品概要
MoN Takanawaの杮落としとして、世紀の大傑作『火の鳥未来編』を題材に、「一人で読む」マンガをみんなで体験する「共読」ライブへ拡張。ロボットアーム・巨大LED・声優・音響・照明を統合し、マンガの余白とコマのリズムを保ったまま、新しいライブエンターテインメントフォーマットを提示しました。
審査評
文化施設MoN Takanawaのこけら落としとして、このプロジェクトが行われたことに、まず大きな意味があると思います。マンガは基本的に一人で読むもの。それをアニメや映画にするのではなく、マンガのまま、みんなで読む体験にしたことがとても面白い。さまざまな技術を使いながら、「マンガを読む」という行為そのものを拡張したところに、デザインとしての新しさがあります。日本のマンガ文化の起点ともいえる手塚治虫、その中でも『火の鳥』を選んだことにも覚悟を感じます。日本を代表する新たな文化施設の幕開けにふさわしい、グランプリ作品だと思います。
(木住野 彰悟)

マンガローグはこれまで味わったことのない不思議な体験です。確かにマンガを読んだ感覚になるけど、そのマンガの世界に没入していくような。映画とも演劇とも朗読劇ともVRともイマーシブコンテンツとも漫画とも全く違う。大きな会場で大勢の人と一緒に味わうマンガ体験です。 デザインの表現領域が1つ増えたような、そんな、新しい体験カテゴリを生み出した点を、私は大きく評価しました。「火の鳥」も素晴らしかったですが、今後マンガローグで、いろいろな作品を体験できることを楽しみにしています。
(佐藤 ねじ)

ACC ゴールド

作品名
コクヨ CI/VIリニューアル
作品概要
創業120年を迎えたコクヨの、多面的な事業体を包摂して支える最新のCI/VIデザインシステム。
社名になぞらえた「594度」という独自の斜線グリッドを核に多様なカラーとモジュラーなパターンを展開。
名刺から社屋、WEBサイトまでフレキシブルに拡張し、過去の継承と未来への挑戦を表すブランド像を刷新した。
審査評
ロゴタイプは、特定の文化や趣味性に寄らず、どこでも機能するニュートラルでシンプルな設計である。一方で印象的なのは、その周辺の展開だ。まるで別のデザイナーが二次創作するように、様々なスタイルで大胆なバリエーションが展開され、受け手を限定しない広がりをつくっている。ロゴタイプそのものに強いアイデンティティを持たせるのではなく、その周辺に生まれる多様な表現を含めてアイデンティティとしている。そのあり方に、今のデザインの気分を感じる。
(田中 良治)

長い歴史を持つ大企業のリブランディングという重責を伴う仕事でありながら、その仕上がりは驚くほど軽やかです。その上、社屋や封筒など、企業の顔としての信頼感や安定感が求められる場面では、違和感のない確かな完成度を感じます。一方で、企業名に由来するロゴの成り立ちが、そのままデザインの核となり、多様なアイテムへと素直に、豊かに展開されていることも魅力的です。新しいアイデンティティが社内外へ自然に浸透していく様子まで想像できます。文具メーカーならではの紙のツールの豊かさにも、見ていて楽しい気持ちになりました。
(田部井 美奈)

ACC シルバー

作品名
dear difference
作品概要
「⽵鶴ピュアモルト」のブランドリフレッシュ案件。
個性の異なる原酒をブレンドする製法と、創業者の⽣涯から「dear difference」というコンセプトを開発。
ウイスキー造りのように、⼿作業でのドット表現にこだわり、時間を捉える撮影を選び、⽵鶴だけの本質的で新しい表現システムを追求した。
審査評
歴史が長ければ長いほどリブランディングは難しい。なぜならば踏襲すべきコンテンツが多く、それをどう認識して次の時代につなげるかの再解釈のプロセスが膨大かつ複雑になるからだ。強いブランドとは、できるだけ多様なタッチポイントでステークホルダーが触れることが望まれる中で、何よりもその「一貫性」が重要であると自分自身も常に心掛けている。その観点から、今回のニッカウヰスキー様の「dear difference」の取り組みは、ブランドの原点までを再定義されていることに驚きを隠せない。その新たな原点をもとに強い一貫性を表現した関わった皆さんの勇気とクリエイティブに拍手を送りたい。
(黒田 英邦)

ACC シルバー

作品名
車中置き去り事故0へ。小さないのちを守る絵本コンテンツ「#たすけてブーブー」
作品概要
子どもがバスや車に閉じ込められる車中置き去り事故は、年間3万件も発生。閉じ込められた際、クラクションを鳴らせば助けを求めることができます。しかし親子の認知率は2〜3%でした。そこで子どもに楽しく覚えてもらえるように、絵本「ぶたすけのラッパ」を制作し出版。「#たすけてブーブー」というアクションを生み出しました。さらに、この活動を自動車会社10社のみなさんと共創。新聞広告で宣言し、それぞれの自動車販売店での読み聞かせやクラクション体験、SNS施策など展開しています。全国の保育園や書店でも広がっており、絵本コンテンツそのものだけでなく啓蒙活動の仕組み自体もデザインしました。
審査評
シンプルでチャーミングで機能しているプロジェクトです。「機能している」は、ともすると、正しさが勝ってしまい、感覚的に「好き」になることを失いがちです。でも「#たすけてブーブー」には、目で、音で、夢中になって記憶に残す力がある。キャラクターデザインとしても秀逸だと思います。そして本気で浸透させようと取り組まれている。IPを解放し、10社の自動車会社と連携、保育園・書店・ディーラーで読み聞かせを実施。いざという時に自分で助けを求められる、子どもたちに一番大事な解決を教えてくれます。ACCの受賞がこの取り組みを広める一つになれたなら光栄です。
(筒井 晴子)

ACC シルバー

作品名
音のない世界に届く応援「サインエール」
作品概要
「聞こえる応援」から「見える応援」へ。スポーツの世界に応援のための手話が誕生。
サインエールは、デフアスリートのために開発された新しい応援の身体言語です。
「応援はデフアスリートに届いていない。」これまで問題視されてこなかった応援の常識を変え、デフアスリートに、誰もが視覚的に想いを届けることを可能にしました。
私たちは、この世界に今までなかった応援の手話をデザインしたのです。
サインエールは、単なるスポーツの応援ではありません。
それは、ろう者と聴者の分断を超えて、共生社会へと世界を前進させるシンボルなのです。
審査評
応援は「聞こえるもの」という前提を疑い、ろう者と共につくった応援のための手話。拍手の手話を土台に、遠くの選手にも届く7つの型へ落とし込んだ、極めてシンプルなアイデアです。しかし効果は絶大。デフリンピックの熱狂を後押しし、過去最多の観客数動員や、大会記録更新などにも結びついた可能性があります。さらに、東京都がプレイブックをオープンソースで公開し、460校以上の小中学校で共生社会を学ぶ教材として採用されました。応援という刹那的な行為が、次世代の学びにまで展開し、デザインが社会制度へ波及した好例となりました。おめでとうございます!
(武部 貴則)

スポーツ観戦というのは、競技場で戦うアスリートさえいれば成立するものではなく、競技者と観客が一体となった空間があってこそ生まれる力があることに気付かされました。応援の手話によってデフアスリートの皆さんが声援を体感できるようになったのはもちろんのこと、なんとかして頑張れという気持ちを伝えたい、気持ちを共有する人々と一緒になって応援したい、そうした観客の願いも叶えられたのではないでしょうか。この世になかった身体言語を生み出したことで、デフアスリートと観客が一体となる、いままでにない世界が生まれた、そのことが素晴らしいと思いました。この取り組みがより多くの人に広まっていって欲しいです。
(吉開 菜央)

ACC シルバー

作品名
HAKUBA GIN
作品概要
HAKUBA GINは、気候変動で変わりゆく森を記録するジンです。観光客にジンを楽しんでもらいながら、白馬村が直面する気候変動の問題について関心を高めるために開発されました。白馬村の森で採取した植物を使用し、ラベルには採取地の写真・日時・座標・気象データを記録。ブック型のパッケージには、村内で課題になっている「ナラ枯れ材」を活用しました。売上の一部は村の自然保全活動に還元されます。
審査評
HAKUBA GINは、デザインには課題を解決するだけでなく、美しく問いを投げかける役割もあることを感じさせる仕事でした。大きな企業ではなく、地域の観光局が主体となり、変化していく白馬の森を「香りの記録」として残すプロジェクトです。植物の香りを楽しむジンを選んだことにも必然性があり、採取したボタニカル、日時や場所を記すラベル、森の写真、被害木を用いたパッケージまで思想が貫かれています。見えにくい自然の変化を、見る・嗅ぐ・飲む・触れる体験として感じられる「カタチ」にした。その一貫したデザインとクラフトが評価されました。
(橋田 和明)

ACC ブロンズ

作品名
人生を共に生きるウイスキー
作品概要
20年後の我が子との乾杯を一生忘れられないものにするために、熟成0年のウイスキーを今買うサービス。ウイスキー熟成の20年と、親としての人生の20年を重ねる。途中、子の成長の節目ごとにミニボトルが届き、20年後にフルボトルが届く。
20年を通じたウイスキーの体験と、顧客一人ひとりに対応した配送まで含めて、ウイスキーの価値を「飲むもの」から「人生を共に生きる体験」へと再設計した。
審査評
20年の熟成の時をともに過ごし、その味が一生残る記憶となる──そんな壮大な時間軸でサービスを広く民主化した、いわば「時間のデザイン」こそが、クラファンで熱狂的に支持された要因なのでしょう。お酒の楽しみ方をもっともっと豊かにしてくれるし、大手飲料メーカーが始められた意義も大きい。年内追加販売が決定ということでそちらも楽しみです。
(松島 倫明)

ACC ブロンズ

作品名
CRAFTMAN,SHIPS 50TH
作品概要
ファッションブランド「SHIPS」の50周年を機にした、ブランドが誇るクラフトマンシップのデザインによる可視化。
デジタルCGを排し、倉庫に眠る残糸42.5kmと帆布を用いて、自社の縫製職人たちが手刺繍した500枚のコマでストップモーション映像を制作。
店頭ディスプレイとしても機能させた。
審査評
なにより、この映像を創り上げたのは外部のクリエイターではなく、SHIPSの服づくりを日々支える職人たち自身であることに、心を動かされました。42.5kmの糸で縫い上げられた約500枚の刺繍。その一コマ一コマに、服づくりに携わる人々の矜持が込められています。AIで何でも瞬時に生成できる時代に、自分たちの手でしか作れないものを自分たちの手で作るという選択。そこに、ブランドの凛とした佇まいが表れています。50年のヘリテージを次の時代へつないでいく意志が宿る、周年にふさわしい作品です。
(米澤 香子)

ACC ブロンズ

作品名
大丸松坂屋百貨店の新VI「百様図」
作品概要
大丸松坂屋百貨店が2025年7月に新しく策定したビジュアルアイデンティティ「百様図」を紹介するWebサイト。「百様図」は紙から作られ無限に柄が変化する模様。誰もが実際に紙を触るような体験ができるよう、紙らしい動きや質感を追求することに最大限こだわった。
審査評
長い歴史を持つ大丸と松坂屋。その二つが積み重ねてきた歴史や価値観を「百様図」というVIで表現しています。特に印象的なのは、デジタルでありながら、紙の素材感や重なり、動きまで、まるで手で触れているかのように感じられること。細部までつくり込まれた表現に、高いクラフトの質を感じます。紙袋では逆に、印刷されたビジュアルなのに、紙が立体的に重なっているようにも見える。デジタルとリアルを行き来するような不思議な感覚とともに、歴史ある百貨店としての質やアイデンティティまで感じられる、完成度の高い表現だと思います。
(木住野 彰悟)