クリエイターズ殿堂

第8回 クリエイターズ殿堂

伊藤 佐智子
伊藤 佐智子
選考理由

サントリーローヤルのCM、ランボウやガウディの広装など、後に続く広告スタイリストに多くの影響を与えた。現在は、映画や舞台、美術などで活躍。

プロフィール
(いとう・さちこ) ファッションクリエイター
1972年アトリエ伊藤佐智子(現・ブリュッケ)を設立し、1973年、渋谷パルコオープニングキャンペーン、資生堂「シフォネット」キャンペーンを皮切りに“オーダーメイド・システム”によるファッションデザイン活動を開始。1983年の「ランボウ/ローヤル」や翌年の「ガウディ」(共にサントリー)のCMで注目されACC賞に輝く。その後も1992年、「南アルプスの少女の初恋」(サントリー)、2009年、「OTONA GLICO」(江崎グリコ)などでACC賞を受賞。広告スタイリストとして長年にわたり活躍。2012年に「ReBORN」(トヨタ自動車)でACC賞グランプリを受賞した。衣裳デザインはもとより、商品開発から空間デザインに至るまで、ジャンルを超えたコンセプチュアルワークを手掛ける。その活動領域は、井上陽水コンサートセットデザイン(99〜)、舞台「人形の家」(08/ デヴィット・ルボー演出)、「ベッジ・パードン」(11/ 三谷幸喜演出)、映画「白痴」(99/ 手塚眞監督)、「式日」(00/ 庵野秀明監督)、「オペレッタ狸御殿」(05/ 鈴木清順監督)、「空気人形」(09/ 是枝裕和監督)、「海街diary」(15/是枝裕和監督)等多数。著書「SARAÇA VISION」他。東京2020パラリンピック 開会式衣装ディレクター。
■ブリュッケ http://brucke.co.jp
岡 康道
岡 康道 氏(故人)
選考理由

90年代、ヒトとモノの関係を深く描くことで、岡康道のCMは異彩を放ちながらも人々の心にいつまでも消えない読後感を残した。そして「タグボート」を創設し、日本のCMの行き先を常に示してきた。
天才的なプランナーの夭折は若い人たちにとっても衝撃的だった。早過ぎる彼の死を、人々の印象にさらに強く残すためにも、今回の殿堂入りとなった。

プロフィール
(おか・やすみち)  クリエイティブディレクター/CMプランナー
1956年生まれ。1980年に早稲田大学を卒業後、電通入社。営業を経験後、クリエーティブ局へ異動し、数多くのCM企画制作に携わった。1999年、電通を退社して日本初のクリエイティブ・エージェンシー『TUGBOAT』を設立し、「カードの切り方が人生だ」(ライフカード)、「ペプシ 桃太郎篇」(サントリー)、「1UP」(住友生命)でACC賞グランプリを3度獲得。その他国内外の賞も多数受賞。クリエイティブの対価にフィー制度を確立させた先駆者としてCM界を牽引した。2013~14年にACC賞テレビCM部門の審査委員長を務める。CMプランナーとしての主な作品に「その先の日本へ。」(JR東日本)、「コロナ氏」(トヨタ自動車)、J-PHONE、「湯川専務」(セガ)、「缶コーヒーのBOSS」「南アルプスの天然水」(サントリー)、「プロバイダーゼロ」(ゼロ)などがある。
2020年(令和2年)急逝。享年63歳。
柿本 秀二
柿本 秀二
選考理由

1983年のTYO設立に参加後、数々のACC賞を受賞。特に、今回の受賞者である、プランナー三浦武彦、ディレクター早川和良と組んだJR東海の作品では、卓越したプロデュース力を遺憾なく発揮した。2002年モンスターフィルムを創業。いくつものショートムービーをプロデュースしており、人と人を結び付けるキャスティング力、予算感覚のセンスなど、90年代のすぐれたプロデューサーのひとりである。

プロフィール
(かきもと・しゅうじ) プロデューサー
1950年北海道出身。1975年、日本天然色映画に入社。プロダクション・マネージャーとして「弓」(資生堂クリームリンス)、「100円で!」(カルビーポテトチップス)、「トヨタ交通安全キャンペーン 渡れない青信号」(トヨタ自動車販売)などの名作に参加し、ACC賞受賞スタッフに名を連ねる。
1983年「ティー・ワイ・オー」設立に参加。プロデューサーとして1984年「夏グラス」(カルピス)でACC秀作賞、1986年には同じカルピスで『「花」四季 レシピ』でACC賞を受賞。以降も数多くACC賞を獲得し続ける。
特にプランナー・三浦武彦氏とディレクター・早川和良氏が組んで1989年「クリスマスエクスプレス’88」(東海旅客鉄道)の全日本CM大賞受賞に続き、翌年「クリスマス’89/ファイト/ハックルベリー」(東海旅客鉄道)と「クリニカDFC 大脱走」(ライオン) が全日本CM大賞を同時受賞するなど、傑出したプロデュース力を発揮した。1994年「アカペラ/アコーディオン/ジャズ」(国際電信電話)で最優秀シリーズCM賞。1997年「24の季節」(メルセデス・ベンツ日本)でACC賞など、次々と名作をプロデュースした。2002年TYOのグループ会社として『モンスターフィルムス』を創業。映画「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」「クヒオ大佐」などのプロデューサーを務めている。
國房 魁
國房 魁 氏(故人)
選考理由

80年代は、スチールカメラマンがCMに大勢参入した時代とも言える。ブラウン管の再現力が向上したことと、スチールカメラマンの意図を理解する照明の人たちが増えたこともあって、スチールとムービーの垣根は数段低くなった。スチール出身にありがちな硬質な映像ではなく、被写体からこぼれる笑顔や天衣無縫さを素早く拾い、見る人々を幸せにした。ミノルタX-7の「宮崎美子」や、富士写真フィルムの「心の写真」や、テイジンの「秋川リサ」、サントリーオールド「リー・ヴァン・クリーフ」など名作を数多く残した。

プロフィール
(くにふさ・はじめ) カメラマン
1934年、京城(ソウル)生まれ。10歳の時、長崎で被爆。都立戸山高校卒業の後、宝塚映画製作会社を経て、1964年よりコマーシャルのグラフィック・CFカメラマンとして活躍する。1971年、「14種発売/ミニ周遊券」(日本国有鉄道)、「リアルライフ(光編)」(日本コカ・コーラ)がACCで秀作賞を獲得。
以降、1990年代中頃まで数々の作品がACC賞に入賞している。
1979年、少女の笑顔が印象的な「心の写真・愛ちゃん」(富士写真フィルム)、1980年、宮崎美子が木陰で水着に着替えるシーンが話題となった「よし子水着/ミノルタX-7」(ミノルタカメラ販売)、1983年、「仔猫の冒険」(松下電器産業)でACC賞を受賞。そして1985年には「FRIENDS/サントリーオールドウイスキー」(サントリー)で全日本フィルムCM大賞に輝いた。
カメラマンとして活躍した以降は、千葉のいすみ市岬町に移り住み、子供たちの笑顔の撮影をライフワークとし、2007年に千葉県の観光ポスターでシリーズ化される。2011年(平成23年)逝去。翌2012年、故人を追悼する「ぼくらはみんな生きている國房魁写真展」が御宿町の月の沙漠記念館で開かれた。
高崎 勝二
高崎 勝二
選考理由

スチールとムービーの間をこともなげに行き来したカメラマン。高杉治朗と組んで、サントリーの「樹氷」や、「ローヤル」シリーズを撮影した。
どんな企画にも対応できる技術とキャパシティを持っていて、失敗作がない。「そうだ 京都、行こう。」は今でも撮り続けている。

プロフィール
(たかさき・かつじ) カメラマン
1946年、東京都出身。数々のCM、広告写真を手掛ける写真家。撮影ディレクターとして活躍。1977年、ディレクターの高杉治朗と組んだ「アシスタント」(キヤノン販売)が秀作賞としてACCに入賞。高杉氏とはその後も、1979年「羊飼い」、1983年「ランボウ/ローヤル」と「タコ/樹氷」、1984年「ガウディ」(いずれもサントリー)でACC賞を受賞し、質の高いCM撮影技術が評価された。1982年から86年まで入賞が続いた名高達郎が世界の超人たちに挑戦する「アリナミンA」シリーズ(武田薬品工業)や、真夏の空間をイキイキと映し出した1986年、「プール /キリンびん生」(キリンビール)、1993年「盛夏/六甲のおいしい水」(ハウス食品工業)などで毎回ACCに入賞を重ね、映像美あふれる撮影表現を追求し続けた。1994年から今日まで続く国民的CM「そうだ 京都、行こう。」シリーズ(東海旅客鉄道)では、京都の美しさを丹念に描いた傑作CMとして多くの人に記憶され、幾度もACCに入賞している。94年に同シリーズの「京都キャンペーン/秋 三千院 清水寺」でACC技術特別賞(撮影)に輝いた。
早川 和良
早川 和良
選考理由

80年代に制作された宝酒造の「東方に宝あり」のシリーズは、その映像の洗練さとファンタジックなストーリーテリングで、人々を魅了した。
このCMは日天を出て、吉田博昭らとつくった「TYO」が、若いCMプランナーを惹きつけるプロダクションに成長して行くきっかけともなった。やがて三浦武彦とのコンビで、数々の名作を連発することになる。日本のCMに欠けていた、ストーリーテリングの技術を確立したディレクターと言えるだろう。その後の、日本のディレクターたちに大きな影響を与えた。

プロフィール
(はやかわ・かずよし)  ディレクター
1952年愛知県生まれ。1975年金沢美術工芸大学卒業後、日本天然色映画・企画演出部に入社し、1982年「ティー・ワイ・オー」の設立に参加。数多くのCM作品を演出し、1989年に「クリスマスエクスプレス」(東海旅客鉄道)で全日本CM大賞(現・ACC賞グランプリ)を受賞。バブル景気に沸く時代の空気を見事に演出した心に残る名作として、今も語り継がれている。
翌1990年「エクスプレスキャンペーン/クリスマス/ファイト/ハックルベリー」(東海旅客鉄道)と「クリニカDFC/大脱走」(ライオン)の2作品でグランプリを連続受賞し、ディレクターとして不動の地位を築いた。「聞茶 茶館/キャッチボール」(キリンビバレッジ)、「夢見るヒコーキ。ANA/バースデーケーキ」(全日本空輸)など数々のヒット作を世に送り出し、40年に及ぶCM制作プロダクション事業を中心から支えてきた。
2003年同社グループ会社「Camp KAZ」を設立。
2016年「ティー・ワイ・オー」の代表取締役社長に就任、2021年より「xpd」の代表取締役社長。
福本 ゆみ
福本 ゆみ
選考理由

1980年代から2000年までの間でACCグランプリを5本受賞。ラジオの広告が衰退していくなかで、“ことばの表現”にこだわり続け、松下電器産業(現・パナソニック)や資生堂など、メジャークライアントのラジオCMを高い水準で守り抜いた。

プロフィール
(ふくもと・ゆみ) ラジオCMライター/ディレクター
1980年に早稲田大学を卒業後、プロダクション勤務を経て独立。ラジオCMの企画制作で松下電器(現・パナソニック)や資生堂、サントリーなどのメジャークライアントのラジオCMを担当し、毎年、ACC賞を受賞した。1981年「テクニクス/原音の心」、1988年「スターウォーズのメイキングSE」(共に松下電器産業) で全日本ラジオCM大賞を受賞。その後も2006年「聖夜の2人」(資生堂)、2009年「寝ても覚めても/ナイトスチーマー」(パナソニック)、2011年「純粋/永遠/希少」(プラチナ・ギルド・インターナショナル)などの作品でACC賞グランプリを受賞し、人々の心の琴線に触れるような作品を次々と生み出した。その他にも「少女から大人へ・ネールズ・ネールズ」、「夫の香り/父の香り・ブラバス」(資生堂)など忘れられない名作を幾つもACC賞に残している。2002年よりACCラジオCM部門の審査委員を長らく務め、ラジオCMの質の向上に寄与している。また近年は俳人としても創作の場を拡げている。
三浦 武彦
三浦 武彦
選考理由

1990年代はJR東海の「クリスマスエクスプレス」のCMから始まった。
今まで、なかなか実現出来なった「ストーリーテリング」の技術によって、三浦はヒトやモノを運ぶ新幹線から「物語を運ぶ新幹線」へと変えた。他にライオンなどヒトとモノの日常をほほえましく描いた。トヨタの「交通安全キャンペーン」のCMも「人と社会にやさしい」という時代のさきがけでもあった。

プロフィール
(みうら・たけひこ)  プランナー
1951年東京生まれ。1975年に多摩美術大学卒業し、同年、電通に入社。クリエーティブ局に配属され、翌1976年、早くも「トヨタ交通安全キャンペーン/長い路」(トヨタ自動車販売)でACC賞を受賞。以降、毎年のようにACC賞を獲得し続け、「卒業写真」(トヨタ自動車)、「ライオンJONA/少女」(ライオン)、「大切な荷物」(全日本トラック協会)など多くの名作を生み出した。
1989年、 “新幹線はコミュニケーションメディア” というコンセプトを掲げ、ディレクターの早川和良氏との名コンビで制作した、最終列車のホームで恋人たちのドラマを描く名作「クリスマスエクスプレス」(東海旅客鉄道)がテレビCM部門で全日本CM大賞(現・ACC賞グランプリ)を受賞。翌1990年も早川氏と共に、「クリスマス/ファイト/ハックルベリー」(東海旅客鉄道)と「クリニカDFC/大脱走」(ライオン)が共にグランプリ受賞し、黄金期のCM時代を力強く駆け抜けた。その後も、1993年「のんきの国/ポカリスエット」(大塚製薬)で優秀賞。1995年「安全 子供」や1997年「24の季節」(いずれもメルセデス・ベンツ日本)でACC賞を獲得し続け、多彩な作風で人々を惹きつけた。2012年、ACC副理事長を務める。
山下 達郎
山下 達郎
選考理由

JR東海「シンデレラエクスプレス」の「クリスマス・イブ」のメロディから90年代は始まったと言って良い。そして、それは今でも続いている。
音楽のCMに与えた影響で言えば、山下達郎の功績は大きい。
ほかに、三ツ矢サイダー、JAL、サントリーなどCMソング多数。

プロフィール
(やました・たつろう)
  1953年東京都出身。1975年、シュガー・ベイブとしてシングル「DOWN TOWN」、アルバム『SONGS』でデビュー。
1976年、アルバム『CIRCUS TOWN』でソロ・デビュー。1980年発表の「RIDE ON TIME」が大ヒット。アルバム『MELODIES』(1983年)に収められた「クリスマス・イブ」が、1989年にオリコン週間シングルランキングで1位を獲得。30年以上にわたってランクイン、日本で唯一のクリスマス・スタンダード・ナンバーとなる。
1984年以降、竹内まりや作品のアレンジ及びプロデュースを手がける。
2015年「平成26年度(第65回)芸術選奨文部科学大臣賞(大衆芸能部門)」に選出。2016年には、1986年から続く「クリスマス・イブ」30年連続オリコン週間シングルランキング100位入りという記録が、ギネス世界記録に認定。2021年には自身のレギュラーラジオ番組『サンデー・ソングブック』が放送1500回を迎え、さらにCMタイアップ楽曲の制作や他アーティストへの楽曲提供など、幅広い活動を続けている。

【第8回クリエイターズ殿堂 選考委員】

  • ■ 選考委員長
    杉山 恒太郎氏
  • ■ 選考委員
    小田桐 昭、早川 和良、小佐野 保、伊藤 直樹の各氏