多田審査委員長 審査講評
今年度新設された『フィルムクラフト部門』の審査委員は、ディレクターやカメラマンなど様々な職種の制作スタッフの皆さんにご担当いただきました。
最終審査会は約16時間に及び、日本の広告制作現場が丸1日機能不全に陥ったのではないかと思うほどの売れっ子の皆さんと熱い議論を交わすことができました。
審査委員の皆さん、本当にありがとうございました。
今回『フィルムクラフト部門』では、「アイデアを制作技術によっていかに高いクオリティの仕上がりへ飛躍させたか」を基本的なクライテリアと致しました。
グランプリを受賞した「森ビル」は、現代では撮影できない風景や人物の再現における高度なVFX技術、各カットの画のつなぎ、音楽の当て方など、すべてにおいて圧倒的なクラフト力であり、さらにそれがイノベーティブであることが高く評価されました。
ショートリスト以上の作品は、それぞれに評価すべきクラフトのポイントがあり、上位のメダルにいけばいくほどそのポイントが多岐にわたり、かつどれかが突出している作品であるという状況でした。
また、フィルム部門から移行した『スタッフ賞』では、「制作スタッフをちゃんと褒めること」を目指しました。
審査方法は、審査委員の皆さんに「この作品のこのポイントを評価したい」というご意見をすべて持ち寄っていただき、そこに貢献したスタッフ全員に授与するという考え方を採用致しました。その結果、15職種のスタッフ(チーム)の皆様が受賞することとなりました。同じ制作スタッフだからこそ分かる高度な技術の数々を評価できたのではないかと思います。さらに最終審査会後、私が各作品の担当プロデューサーにインタビューし、最終的な受賞者を決定させていただきました。
『フィルムクラフト部門』の存在により、作品のクラフト部分や制作スタッフにフォーカスが当たることで、特に若い世代のモチベーションが上がり、人と技術の成長に貢献できればと考えています。審査委員の皆さんは、事前のキックオフミーティングの段階から全員同じ思いでいてくださいました。受賞された皆さんが喜んでくださり、他の皆さんも今後この部門の受賞を目指してくださるなら、当代きっての売れっ子の審査委員たちの16時間の頑張りは報われるのではないかと思います。