古川審査委員長 審査講評
フレッシュとベテラン、作り手と送り手、メディアのプロフェッショナル、そして異業種のクリエイターの方々。まさに多様な視座を得た審査会は、リモートとは思えない活気ある意見交換の場となった。
Aカテゴリーのグランプリは、エフエム群馬の特殊詐欺対策キャンペーン。同クライアントの過去作で類似手法への指摘もあったが、審査委員が口々に「自分の母親(おばあちゃん)に電話したくなった」と、「リアルなおばあちゃんの声」に心を動かされた。切実なテーマに真摯に向き合い、「ちゃんと効く広告」を考え続ける中で、再び到達した高みであろう。
また特筆すべきは、グランプリ含め各賞にU29制作の作品が入賞したことだ。企画・キャスティング・演出と、そのすべてに自分の思いを乗せやすいラジオCM制作。そこに若い力がチャンスを見出していること、高いレベルの作品が生み出されていること、そして結果を勝ち得たことは素直にうれしい。もっと、どんどんやって欲しい。
Bカテゴリーは、「何を」「どう評価するのか」混沌とする中、COTEN RADIOが鮮やかにそのひとつの答えを示してくれた。僕自身、人気のいち音声コンテンツ(ポッドキャスト)と思っていたものが、実は知名度獲得(ブランディング)・人材募集(リクルート)・資金調達(投資家へ)の「広報活動」である、というプレゼンテーションは圧巻であった。「武器は音声と、歴史への愛だけ」という端的なアイデア。自分たちの強みを「音声」に託し、新しいビジネスの可能性を提示してくれたことは、まさに歴史的なことだと思う。