細川審査委員長 審査講評
簡単には答えが出ないことがこの先の世界にはますます増えていくと思いますが、それでも、人間は対話することができる。これからの時代、広告も一方的な発信ではなく、生活者とクライアントとのコミュニケーションツールになっていく。だからこそロジックだけでもなく、情熱だけでもなく、倫理や哲学を持ち、それを表明したり、投げかけたりする勇気のある映像が人の心を動かすと今回の審査を通じて感じました。3年連続グランプリの「進もう、すべてを栄養にして」という今を生きる人へのエールが詰まったフィルムにはそのすべてがあると思いますし、ゴールドをとったにわとりおじさんの投げかけもそうです。ペットを飼う責任について、決めつけや結論はなく、一人の実在のおじさんの生活を正直に、丁寧に追うことで、見る人にじわじわと考えさせる映像で、議論が盛り上がりました。Bカテゴリーのグランプリを受賞したモンスターストライクも、携帯ゲームをきっかけに生まれる世代を超えた様々なつながりを描いていますが、今までそういったゲームに持っていた固定概念が壊され、リアルなコミュニケーションツールなんだ、というアップデートがなされたことに評価が集まりました。さらにはそれらの映像はユーザーの声を元に構成されており、そのこともまた、これからの広告が生活者とのコミュニケーションツールになっていけることを示していると思います。