太刀川審査委員長 審査講評
未来を少しマシなものに変えてくれるプロジェクトが見たい。そんなプロジェクトを応援したい。デザインにはそんな未来を現実に近づける力があると、僕は信じたい。
デザイン部門の審査委員長として、任期の2年を終えた。この2年間、そして前審査委員長の永井一史さんの頃から、そんな未来に希望を投げかけるプロジェクトの出現を応援するための賞として、本賞の審査を重ねてきた。
未来のためのデザインは、よく誤解される。社会の課題を解決していれば、発想や作り込みが甘くても良いと思われやすいのかもしれない。
誰も見たことのないクレイジーかつピュアな方法で、広い社会や遠い未来のためになるもの。それらを両立させるアイデアを生み出すのは難しい。なぜなら社会課題は複合的で、純度の高いアイデアでの解決が困難だからだ。しかし妥協の産物になった時、いかなる説明を並べても、そのデザインはむなしく響くことがある。
だからこそデザインなのだ。私たちはコンセプトの強度と社会へのインパクトの両立をあきらめず、純度ある強いコンセプトで未来に訴えかけるデザインに素直に感動する。むしろ世界を変えるのは、知識や予定調和よりも、クレイジーな挑戦なのだから。